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高校生以下土曜日・日曜日・祝日・振替休日・学校の夏休み期間は無料 高校生以下のお客様は、「大久保英治展」および「所蔵作品展」の観覧料が、土曜日・日曜日・祝日・振替休日・学校の夏休み期間は無料となります。お休みの日は、ぜひ美術館に遊びに来てください!

現代美術家・大久保英治(1944~)の50年あまりにわたる活動を、ドローイング、絵画、オブジェ、インスタレーション、コラージュ、版画などにより紹介します。四国八十八カ所を歩いて多くの作品を制作したプロジェクト(1998-99年)や、日本と韓国を舞台としたユーラシア・アートプロジェクト(1999-2001年)など、日本を代表するランド・アートの作家として知られてきました。しかし、 大久保の活動はそこにとどまりません。本展ではこれまで公開されることがほとんどなかった初期作品から、新作までをたどり、「時間」「自然」「歴史」「場所」などの観点から大久保英治の制作を貫く本質に迫ります。

We will hold an art exhibition about contemporary artist Eiji Okubo (1944-). His artistic career spans over 50 years. This exhibition consists of drawing, object, installation, and collage ,etc from early works exhibited for the first time to latest works. Although Okubo has become known as a land artist, represented by the project (1998-99) in which he walked around Shikoku 88 temples pilgrimage and created many art works. However, this is not all about his art activities. This exhibition pursues the essence of Eiji Okubo's creation from the perspectives of "TIME," "NATURE," "HISTORY," and "SITE."


作家略歴
1944年
兵庫県西宮市生まれ。岡山県小田郡矢掛町に育つ。
1968年
日本体育大学体育学部体育学科卒業。
1975年
京都教育大学養護教育課程専攻科修了。
1973年
大阪にて初個展。

以後イギリス、ドイツ、韓国など世界各地でも作品を発表。
現在、大阪市在住。アトリエを奈良県高市郡高取町に構えている。

作家ホームページ
https://www.eijings.com/
展覧会構成
 「美術を追究するためには歴史、文化を学ばなければならない。*」美術を志した早い時期から、大久保はこの想いを持って制作に取り組んできました。「四国八十八カ所」(1998-99年)を始めとする多くのランド・アートのプロジェクトでは、その地域の歴史や文化への探求を基盤として、その場所に深く関わり、そこだからこそ意味がある作品を多く制作しています。
 大久保の古代への想いは、近年盛んに制作している絵画作品にも込められています。〈玄室(玄の時)〉は、死者の棺がおさめられた古墳の石室内部に入った時の、時間や空間が不確かで奥深い空気感を表しています。それは、「もや」がかかったように前後左右や上下が曖昧になり、時間の流れもはっきりしない不思議な感覚です。〈玄の記号〉はヨーロッパの氷河期の洞窟に描かれていたといわれる原初的な記号をヒントにした作品群です。また、〈儀礼・桃〉は、纏向(ルビ:まきむく)遺跡(奈良県桜井市)から大量の桃の種が出土し、それらが祭事に用いられていた可能性や、邪馬台国論争にも大きな影響を与えたことにちなんだ作品です。

*友井伸一 編「大久保英治 年譜」『徳島県立美術館研究紀要18号』2017年 p.9
 大久保は2022年から奈良の明日香村の南にある高取町にアトリエを構えています。この地には、土佐、薩摩、吉備など、日本各地の地名が残っています。それらは、かつて古墳時代から飛鳥時代にかけて日本の政治文化の中心地であった飛鳥を支えるために各地から人々が集められ、住み着いていた名残です。高取は飛鳥に隣接しながらも、中央ではなく、飛鳥を支える周縁にありました。大久保はこのように中央から離れた周縁に注目し、それを辺境という考え方でとらえています*。それは、日本そのものが地理的にアジアの端に位置する辺境であり、美術においてもまた、西洋近代のモダンアートに対して辺境にある、という自覚につながっています。中央を常に意識し、その影響に右往左往する辺境人の積極的な意味とはなんだろうか。大久保は、美術とは、日本人とは、歴史とは、という大きな問いかけに、辺境人としてアプローチしようとしています。
 ロビーの写真パネルで紹介している〈支〉は、高取町の市尾墓山古墳を背景に立っています。作品の中央上部の大きな石を、周りの木材が支えている姿は、中央と辺境人との在りかたを象徴しています。高取という場所に在ることに大きな意味がある作品です。〈辺境のたたずまい〉のコーナーには、この高取の地で使われてきた鍬(ルビ:くわ)や鋤(ルビ:すき)、鎌(ルビ:かま)などの農具による複数のオブジェ作品を設置したものです。これらは、今は大久保のアトリエとなっている民家の納屋に残されていたものです。

*内田樹 著『日本辺境論』新潮社 2009年
 さて、ここからは初期の作品から現在までを、時代順にたどっていきます。まず最初は日本体育大学を卒業し、養護学校で教えながら、やがて独学で美術家になっていった初期の作品です。具象からまもなく抽象にうつり、さらに「点とは、線とは、面とは」という根源的な問題を追求して、ドローイングや版画を大量に描きながら試行錯誤を続けました。
 小さな四角をペンで延々と書き連ねるドローイング、フリーハンドの線を大量に描き続ける銅版画、彫刻刀のストロークを繰り返して刻み、それらが集積した版を多色で刷り重ねる木版画、絵の具の層をつくり、それを研ぎ出して下の層を見せていくアクリル絵具の絵画作品、封筒を開いて全面を線で塗りつぶしたり、パステルを手でこすりつけるなどして描いたドローイング。これらには、いずれもシンプルな表現手法のみを用いて、そこに時間や行為が残る、という考え方が込められています。この時期に、公募展やコンクールにも何度か挑戦していますが、その多くは未発表でした。
 このような作品を美術史に照らしてみると、表現のための要素を最小限に切り詰めていくミニマル・アートに該当します。当時このような制作を行っている作家は、ほかにも多く存在していました。しかし独学の大久保は、そのことをはじめは知りませんでした。やがて、それを知った後は、自分らしさをより意識するようになります。そして、独自の転写手法による「トランスクリプション」シリーズは評価されることとなり、イギリスのヴィクトリア&アルバート美術館や国立国際美術館に収蔵されました。

 大久保は1981年に教師を辞めて美術家に専念します。この頃から海岸を歩き、流木や葉、羽、石などを使った自然を要素とする制作へと向かいます。そして、このような制作がランド・アートと呼ばれていることを知るようになりました。
当時、大久保は次のような言葉を残しています。
「環流:物が生まれ、土に還っていく自然の流れの中で、物と物をある時点で結びつける。-それはあたかも流れをスロービデオで見、ストップさせたかのようである。その状態を私は作品として提示しようとしている。古代人への想いをこめて、自然の物、身の回りにある物のもっている力強さを、ごく当たり前の形で表出することに私は心を配っている。*」
 これは大久保のランド・アートにとって重要な考え方となります。そして、1990年代以降ランド・アーティストとして、世界からも注目を浴びるようになりました。また、「四国八十八カ所」(1998-99年)をはじめとして各地を精力的に歩き、「歩行」が大久保のトレードマークの一つとなりました。
 現地の材料で制作した屋外作品の多くは既に消滅していますが、本展では、新聞紙で作った紙粘土と流木で構成し、黒く塗り込めたオブジェ(〈波〉、〈水滴〉)や、自然にできた影で時間を見せる〈影シリーズ〉、海岸に漂着した大量の使い捨てライターの集積に時間や場所、出来事などを見る〈水の記憶〉などを展示します。
 自然や大地と関わる作品は、自然保護や環境問題がテーマであると見なされることもよくあります。しかし大久保の場合は、「点、線、面」、「垂直、水平」、「時間」、「場所」という初期から共通する根源的な問題意識の追及が制作の基盤となっています。

*大久保英治 『A WALKING MAN-OKUBO』児玉画廊 1990年 pp.1-2
 大久保の作品は、初期作品からランド・アートを通じて、表現の要素を厳選したストイックな印象を与えます。しかし、その素顔は意外にも、思いつくまま、自由に気ままに制作していく子どものような一面を持っています。
 それは初期から現在に至るまで、発表の機会がなくても積み重ねてきた多くのドローイング類などに表れています。気に入ったモチーフを飽きるまで繰り返し描いたり、時には利き手ではない左手で描くこともあります。また、開いた封筒に描いたものや、トランスクリプションなど、初期作品と類似する作品も見られます。
 これらは一見すると過去の繰り返しのようにも見えますが、そこには封筒に描くことの意味の問い直し、線の集積が面になるという足し算の考え方の実践、異なった画材や紙によるトランスクリプションの手法の検証、本当に何も考えずに(ノーアイデアで)描くことが出来るかという試みなど、常に「新しみ」を求める再創造の想いがあります。大久保におけるこの「新しみ」は、大久保が敬愛する松尾芭蕉の俳諧の精神「新しみは俳諧の花」に通じています。遊び心やユーモアを失わず、しかも遊びに終わらせずに「新しみ」を追求する姿勢や行為は、大久保の原動力なのです。

 2011年頃から、大久保は普段の散歩の最中に拾ったものによるコラージュを、毎日のように制作しています。これらの〈日常の歩行〉シリーズは、一年におよそ500点を超えるペースで現在も日々制作中です。
 歩行中に拾われた「もの」は、それが元々あった場所や文脈、意味付けから解放されたオブジェ(ものそのもの)になります。その時、オブジェは本来持っていた固有の性格を捨て去って、どの場所にでも共通する一種の普遍性、国際性を備えます。それにもかかわらず、大久保が拾ったオブジェには、その居場所から断ち切ることのできない個別性、ローカル性が深く刻印されているように感じます。それは、大久保の歩行がその土地の文化や人間、歴史や土着性と深く関わるものだからでしょう。ローカルの中にこそ普遍はあり、ローカルからはじめなければ到達できない国際性があることを、大久保の歩行、オブジェ、コラージュは教えてくれます。歩行時の拾得物による〈日常の歩行〉シリーズは、長らく自然や大地と関わる創造を続けてきた大久保のエッセンスなのです。
 しかし、これらのコラージュが物語るのはそれだけではありません。大久保の作品は難解でストイックな印象がありますが、これらのコラージュはイメージをたどる喜びや、構成の心地よさ、ユーモア、そして繊細さや初々しさなどが感じられ、おしゃべりで冗舌な作品です。そこに、大久保の素顔の伸びやかな一面を垣間見るようです。体育会系・独学の無骨で老練な手から日々生まれてくる、これら1点1点のコラージュは、大久保英治という人間を構成する1つ1つの細胞なのかもしれません。現在進行形・大久保英治の現在の姿がここにあります。

開催概要
展覧会名:
特別展「大久保英治:辺境の作家 1973-2024」
会  期:
2024年7月13日[土]-9月23日[月・振休]
会  場:
徳島県立近代美術館
開館時間:
9時30分-17時
休 館 日:
月曜日(7月15日、8月12日、9月16日、9月23日を除く)
 
7月16日[火]、9月17日[火]
観 覧 料:
一般 800円[640円]/高・大生600円[480円]/小・中生400円[320円]
 
[ ]内は 20 名以上の団体料金。

  • 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳等をご提示いただいた方とその介助者1名、未就学児はそれぞれ無料。
  • 小・中・高生は、土・日・祝日・振替休日、学校の夏休み期間は無料。
  • 65 歳以上の方で証明できるものをご提示いただいた方は半額。
  • 特別展の観覧券で所蔵作品展もご覧いただけます。
主催:
徳島県立近代美術館
後援:
徳島新聞社/四国放送株式会社/エフエム徳島/(公財)徳島県文化振興財団
助成:
芸術文化振興基金助成事業芸術文化振興基金助成事業

文化の森 千客万来事業

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