※当館の収集方針にあわせて、3つのコーナーで展覧し、展示室3では、特集展示をします。
※3月7日をはさんで、すべてのコーナーで、一部作品が入れ替わります。
展示室1
【20世紀の人間像】
ピカソ作品を軸としたコレクションの華をご覧頂いた後は、動きやうねりの中にある人間像と思考や感覚が収斂してゆく世界へと誘う人間像を対比して展覧します。
アンフォルメル(不定形絵画)の作家として知られるジャン・デュビュッフェは、既成の形式にとらわれず、生き生きと伸びやかで大胆、新鮮な画面を創り出しています。カレル・アペルは、目に鮮やかな色彩と激しい筆遣いによって、原始的な生命観を、言葉を介さずに表していると言えるでしょう。トニー・クラッグは、その形態によって、作品にスピード感のある動きを与えているだけでなく、鑑賞する者の動きをも取り込むことで、作品にささやかなユーモアと軽快感を付け加えていますし、設楽知昭は、自らの身体との直接的な対話を通して、見ることと描くことを意識した制作を行っています。鑑賞していると、自分の身体が思わず動き出しそうな気分を味わうかもしれません。
他方、ジョージ・シーガルの作品には、時間が封じ込められたような静かな味わいがありますし、アントニー・ゴームリーの彫刻作品は、感覚をしのび込ませて鑑賞していただけます。作品と対峙して、静かに内なる感覚を研ぎ澄ましていただきたいと思います。
○会期中、25作家による31点を展示予定です。
【現代版画】 2期に分けて展示します
問いかけよ 1 1月29日[土]−3月6日[日]
問いかけよ 2 3月8日[火]−4月10日[日]
荒川修作(1936-2010年 愛知県生まれ)、オノサトトシノブ(1912-86年 長野県生まれ)の作品を展覧します。
荒川修作は、1958-61年読売アンデパンダン展に出品し、60年に篠原有司男、赤瀬川原平、吉村益信らと共にネオ・ダダ・オルガナイザーズ・グループを結成します。ハプニングなどを行う一方で、毛布や木綿、セメントなどで作った〈箱〉のシリーズを制作し、1962年の渡米後は、ニューヨークを拠点に活動を続けました。1963年頃から乳白色の地に図形や記号、言葉を描く〈ダイヤグラム〉のシリーズを、69年頃からは〈意味のメカニズム〉のシリーズを制作し、言葉をイメージや物のシンボルとしてだけでなく、自立した、描かれる対象としてとらえることで、意味作用とは何かを問い直しました。
オノサトトシノブは、戦前、黒色洋画展や自由美術協会の創立に加わり、具象作品とともに円を用いた抽象作品を発表します。第二次世界大戦中は召集を受けて旧満州に渡り、終戦後シベリア抑留を経験します。戦前の作風は、キュビズムや構成主義の影響を受けたものでしたが、1954年頃から円形が主題となり、やがて朱、黄、緑、紺の4色を基調として、画面全体を覆うモザイク風の方形群から円形が浮かびあがる幾何学的抽象様式を確立し、高い評価を得ました。油彩画の制作と並行して、シルクスクリーン、リトグラフ、木版によっても制作し、一貫して円と格子を用いた表現で、日本の抽象絵画の先駆けとなりました。
いずれも、画中の言葉の意味作用や純粋な幾何形態の持つ清明な雰囲気、秩序などを通して、観る者に働きかけています。静かに対面し、心を向け、自らに問いかけていただきたいと思います。
○会期中、2作家による29点を展示予定です。
展示室2
【徳島ゆかりの美術】
このコーナーでは、県出身や徳島ゆかりの作家の作品のほか、徳島の風景や風物に題材をとった作品などを展示します。
今期は、県出身の伊原宇三郎(いはら・うさぶろう 1894-1976年 徳島市生まれ)、三宅克己(みやけ・こっき 1874-1954年 徳島市生まれ)、山下菊二(やました・きくじ 1919-86年 三好郡生まれ)などの油彩・水彩の作品に加えて、先頃惜しくも逝去した一原有徳(いちはら・ありのり 1910-2010年 那賀川町生まれ)の版画作品、広島晃甫(ひろしま・こうほ 1889-1951年 徳島市生まれ)の日本画作品を展示します。
○会期中、5作家による25点を展示予定です。
展示室3
【特集・彫刻の魅力】
今回は、通常は特別展のために使う展示スペースを用いて、彫刻作品をゆったりとご覧いただこうと思います。
彫刻には素材そのものの魅力や素材の扱い、あしらいを想像する楽しさ、空間にしめるヴォリュームを味わう見方もあれば、まるで舞台で演じられている物語の一場面を見るような自由な想像力の働きを促されることもあり、その鑑賞には、多方面からのアプローチがあります。それぞれに、自分なりに楽しめるポイントを見出していただきたいと思います。
金属板を切って、成形したコールダーの自立するかたちには、厚紙を使って立体物を作るような気軽さと親しみやすさを感じますし、同じく、ブリキ板を曲げたり、くっつけたりして組み立てた秋山祐徳太子の作品も、素材への親しみと溶接という制作過程への馴染みから、作品を身近なものとして感じられるでしょう。
段ボールという素材そのものの持つ、独特な表情をうまく捉えたのは、篠原有司男や、片瀬和夫の作品です。かつて考えられなかったほど日常的でチープな素材を、彫刻作品として成立させてしまいました。樫尾正次の作品にも、素材の持つ温かみが、ユーモラスな内容に明るさとしっとりとした重みを与えており、作品が息づいていることが感じ取れます。
ジョン・ディヴィーズの作品世界には、これから起きようとする出来事に立ち会わされるような気持ちにさせられますし藪内左斗司の作品には、一人語りをする役者の口上を聞かされているような、ユン・ソクナムの作品からは、作品に表された人物の声が口々に聞こえてくるような気配を味わうのではないでしょうか。
○会期中、22作家による38点を展示予定です。
○このほかに、美術館ロビー、屋外展示場、彫刻の小径に13作家、13点を展示。
○会期中の展示作品の合計は66作家による136点となる予定です。
月日 | 担当館名 | 電話 | 担当者 |
1月26日 | 県立近代美術館 | tel 088-668-1088 fax 088-668-7198 |
学芸員 吉原、竹内 |