| 説明 |
現代版画のコーナーでは、年間12回の展示替えを行います。今年度は、年間を通して様々な作家による版画集を紹介します。マッタ(1911-2002)は、チリ生まれ。本名は、ロベルト・セバスチャン・アントニオ・マッタ・エコーレン(エチャウレン)。サンチャゴのカトリック大学で建築を学んだ後、パリに渡り、建築家ル・コルビュジェの事務所で働きました。1937年頃、ピカソやミロと知り合い、デュシャンとも親交を結んでいます。また、ダリを介してシュルレアリスムの主唱者のブルトンと出会い、オートマティスム(自動記述法)の手法に共鳴、シュルレアリスムの運動に参加しました。第2次世界大戦中の1939年ニューヨークに亡命、48年にヨーロッパに戻っています。アメリカでは、ポロックやゴーキーなどの作家と交流し、後の抽象表現主義に大きな影響を与えました。1957年にニューヨーク近代美術館で初の回顧展を開催しています。日本では、1985年に東京のフジテレビギャラリーで初の個展、86年に東京の原美術館でデッサン展、94年には横浜美術館で「アンドレ・マッソン&ロベルト・マッタ展」が開催されています。また、1995年には高松宮殿下記念世界文化賞・絵画部門賞を受賞しています。今回は、マッタの版画集を3つ紹介します。前半に紹介する〈薄暗いアーチのある時間〉では、異形の生命体のような存在が、建物のような形の集まりがある海辺の岩場でドラマを繰り広げます。後半には、線そのものが人物であり機械のように自由自在に展開する〈解き放たれた直線たち〉、自由な線と形と色が響きあう、スペースオペラのような〈ホメロス V〉を展示します。 |