| 説明 |
金属凹版を始めた1960年代当初から、一原は機械部品や加工した金属レリーフ、自分の版画原版などを組み合わせた、オブジェの制作に手を広げている。紙に刷った版画だけでなく版となる金属自体への興味、また人工的な機械部品への関心を、そこに見ることができる。
一原は版と版画について、ネガとポジの関係にあると説明している。ちょうど写真の像がネガから作られるように、版は作品のネガともいえるわけである。金属レリーフや版自体のオブジェ化とは、いわば本来はネガとなる版を実体(=ポジ)として見る試みでもあるのだ。ネガとポジの関係はもとより相対的である。作家の創意もまた、ネガとポジの間を自由に往還しているのだ。
ステンレス鏡面をバーナーで焼付け、歪んだ世界を映し出す作品や、鉛板の変容をレリーフとして見せる作品、灼熱した金属の炎像を紙に焼付ける作品などは、いずれも既成の版画観からは程遠いものである。しかしまた、ネガとポジの関係性として「版」の可能性をより根底的に問い直すものといえるだろう。
●オブジェ●
機械部品や生き物から刷った版画など、何かの標本のように見えます。また私たち鑑賞者が自由に付け変える参加型の作品も一原は好んで制作しています。 |