説明 |
アーティスイツ・ブックスの時代の作品をいくつか振り返るだけでも、本をめぐる表現については、考えられるあらゆるパターンが出尽くした感があります。本は言葉と図像の同居が無理なく可能であり、時間や空間を自由に行き来する事ができ、さらには物質の手触りや質感、物体としての造形力も兼ね備えています。また、都合のいい事には、大衆性、伝達性、複数性といった要素を本という形にするだけで自ずと暗示さえしてくれます。思えば本とは、懐の深いメディアです。
一九八〇年代以降も、本の作品は次々と生まれています。挿絵本や詩画集はもとより、箱(ボックス)に紙切れや様々なグッズを収めたもの、ジャバラ状のもの、コピーをホッチキスで閉じたチープなもの、オブジェとセットになったもの、それ自体がオブジェと化したもの。本の持つ物語性や記録性を生かした写真集や、タイポグラフィに工夫をこらして言葉を視覚化したもの等々。
今、美術の表現媒体として認知された本は、様々な引き出しを用意して作り手たちを待ち構えています。そんな本を相手にする時、表現のスタイルやアイデア、方法論に加えて必要とされるものは何でしょうか。ここでは、それぞれ独自の取り組みを見せている六人の作家(荒木高子、アンゼルム・キーファー、村岡三郎、大久保英治、藤本由紀夫、大竹伸朗)をご紹介します。 |