| 説明 |
写真や版の性質をユニークな方法で使いこなす作家たちを紹介します。
秋岡美帆(あきおかみほ)は、樹々や木もれ日を題材に、あえてとらえどころのない像を撮影し紙に転写します。その大画面を前に私たちは、日常のまなざしに見えていない自然と出会うことになります。武蔵篤彦(むさしあつひこ)は即興的なドローイングを、重ね刷りの版画技法で組み合わせます。ニュアンスに富んだ色づかいの元にあるのは、オーストラリアの森林風景を見た体験であったといいます。内なる自然のイメージを喚起する作品です。
また、阪本幸円(さかもとこうえん)は、自然の素顔を再発見させます。ふる里である北陸の雪景色を舞台に、積もる、溶けるなどの変化にゆだねた造形を作品として記録します。
出店久夫(でみせひさお)は鏡像のように反転する写真のコラージュを用いて、虚実をないまぜにした不穏な世界観をあらわします。一方、内田智也(うちだともや)の銅版画は、巨大な蜂の巣か鍾乳洞を思わせる地層と、迷宮のような光景がだまし絵のように入り組んだ、虚構の世界を描きます。黒一色のグラデーションがさらに閉塞感をあぶり出しています。
作家たちは「写す」働きに一ひねりを加えることで、もう一つのまなざしと意識を手に入れたようです。 |