| 概要 |
横尾忠則の作品では、イメージを本来の場所から引き剥がし(cut)、新たな文脈へと投げ込む(paste)、いわゆる「コラージュ」的な手法が多用されている。それは横尾の出自がグラフィックデザイナーであったことと無関係ではないが、作家自ら「いまや生きることはコラージュそのものかも知れない」と語るとおり、「コラージュ」は単なる一技法の域を超えて、横尾芸術における思想的な支柱の一旦を担うものだといえるだろう。横尾のあらゆる作品に「コラージュ」的な要素を認めることができるが、本展では、ある意味がそれが最も先鋭的かつ直接的なかたちで現れた、いわゆる「多次元絵画」を中心に紹介する。切り裂いたキャンバスを重ね合わせることで、物質的かつ重層的な絵画空間を追求していた’80年代末から、それらが同一平面上に展開し、万華鏡のような華麗なイメージを現出する’90年代はじめにかけては、横尾の絵画の展開のうえでも最もドラマティックな時期のひとつである。また本展では、横尾の造形思考に影響を及ぼした、主に20世紀初頭の西洋美術におけるコラージュ的な作品をあわせて展示することで、横尾ならではの「コラージュ」表現の今日的な意味を逆照射することを試みる。 |