概要 |
柳幸典は、日本の現代美術において、国際的にも高い評価を受けている作家のひとりです。彼が主題化してきたのは、様々な政治的、社会的な問題です。それらを優れたコンセプトのもとで、ユニークなかたちに作り上げた作品は、つねに国内外で大きな反響を呼んできました。たとえば、<アント・フォーム>のシリーズは、土に着色して作ったいくつかの国旗をパイプでつなぎ、そこに蟻を通して、国旗が崩れることによって、国そのものが解体する様を表現しています。また、日本国旗や「¥」、憲法9条の文面など、日本を示す記号を明滅する電飾で表した<ヒノマル・イルミネーション><ヒノマル・コンテナ><アーティクル9>は、私たちの問題を様々な形で問いかけます。さらに近年の<パシフィック・シリーズ>では、軍艦の模型等によって、この国の近代化に焦点が当てられます。
今展の副題「あきつしま」は、古い日本の異名であり、また第二次世界大戦でフィリピン沖に沈んだ軍艦の名前でもあります。本展が、日本の様々な側面を扱ってきた、この作家の主要な代表作を網羅する回顧展であるとともに、<パシフィック・シリーズ>の中心を占める、この軍艦を扱った新プロジェクトを紹介する展覧会でもあるからです。 |