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「第I章 人間 ・子供と家族」の詳細情報
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テーマ名称 第I章 人間 ・子供と家族
展覧会名称 前田寛治の芸術展-詩情と造形-
説明 「子供と家族」は、前田にとって最も重要なモティーフのひとつであり、また描かれた人達が親しみのある人達であったため、初期から晩年の病床に至るまで、生涯にわたってこのモティーフを描いている。  初期の砂丘社時代の作品としてよく知られ第三回帝展に出品された《花と子供等》、名をモデルに描いた《立てる子供》、東京美術学校卒業制作の《自画像》など、この時期の作品は、第・章「風景」に掲載されている《竜巻》を含め、父や母、親戚の人々など、故郷鳥取の身近なモティーフが、愛情を込めて詩情豊に描かれている。またその作風も、アカデミックな写実と、後期印象派の描法をほうふつとさせる点描風の作風に分けられ、既に彼の作風の二面性が窺える。  留学中の前田は、代表作となった人物画を数多く描いているが、それらの多くは、裸婦、婦人像、労働者であり、この時期「子供と家族」を描いた作品はそれほど多くない。《ポーランドの姉妹》や《家族》は、留学中の初期の作品であるが、これらの作品は写実と点描風の作品として好対照をなしている。留学中も彼のモデルとなったのは、身近な人だったのであろうか。これらの作品には、気取らない素朴で日常的な人物が温かく描かれている。  帰国後の前田は、再び母や長男、親しい大工の家族など、身近な人達を精力的に描いている。第八回帝展に出品された《少女と子供》、前田のアトリエを建てた大工の棟梁を描き第四回一九三〇年協会に出品されセンセーションを巻き起こした《棟梁の家族》、長男棟一郎の2歳の誕生日に描いたスケッチを基に描かれた《子供の顔(棟一郎)》など、これらの作品は代表作としてもよく知られている。また死の直前の病床で描かれた「子供」の連作は、渡仏の船上で前田が子供を描いたスケッチに、アインシュタインが「子供を描くには子供の心で。」とサインした言葉を思い起こさせる。そこには、その言葉通り温かい目で子供を見守り愛しむ前田の心情がひしひしと感じられ心打たれる。
コピーライト 徳島県立近代美術館 2006
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