徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
学芸員の作品解説
男女
1963年
紙本着色
181.6×259.3
1963年
紙本着色
181.6×259.3
中村正義 (1924-77)
生地:愛知県
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中村正義男女
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徳島新聞連載1990-91
中村正義 「男女」
森芳功
中村正義は、終戦の翌年(1946年)、日本美術展覧会(日展)に出品し初入選します。22歳でした。その後数年で特選をとり、1960年には36歳の若さで審査員にあげられます。年功序列のきびしいこの展覧会にあって異例なことで、「日展の型破り」といわれます。しかし、翌61年、この地位を捨て、日展を離れてしまいます。画壇の封建的なありかたを批判し、自らが信じる日本画の革新をすすめようとしたのです。「男女」は、日展を離れた2年後に描かれた作品です。私たちが、日本画に対して持っている先入観を打ち破るような強い表現といえます。人物のかたちが極端に変形されているだけでなく、強烈な色彩と大胆な筆使いで描かれています。また、絵の具が何層にもわたって描き重ねられることで、重量感ある絵肌がつくられています。
戦後、これまでの日本画のあり方に対する批判が強まり、日本画は時の移り変わりに応じきれず滅びてしまうという意見も出るほどでした。戦後の日本画は、そのような困難のなかで日本画の可能性を信じて新しい表現を模索した作家たちによってつくられてきました。この作品の持つ強烈な色彩と奔放な筆づかいは、因習にとらわれず新しい時代の日本画を生みだそうとした、彼の挑戦の姿の表れといってもいいでしょう。
毎日新聞 (四国のびじゅつ館)35
1996年3月16日
徳島県立近代美術館 森芳功
1996年3月16日
徳島県立近代美術館 森芳功