徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
学芸員の作品解説
貌2
1956
ブロンズ
120.0×95.0×45.0
1956
ブロンズ
120.0×95.0×45.0
建畠覚造 (1919-)
生地:東京都
生地:東京都
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建畠覚造貌2
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この執筆者の文章
建畠覚造 「貌2」
安達一樹
この作品は、作家によるコメントが当時の美術雑誌に掲載されています。その一部をまず紹介しましょう。私の作品群には二つの系列があると思っている。その一つは彫刻の純粋なそして厳密な構造を押しすすめて、その頂点に立ちつつ次に来る造型の可能性を見い出すための実験であり、此の場合作品の抽象性は可成り無機的である。
他の一つは作品を通じてその造型性を超えて感応しようとする私の人間像、生活、幻想等の有機的な定着にあると云っていい。作品「貌2」は此の系列に属する作品だと思っている。私がたえず超えようとして屡々佇まざるを得なかった抽象彫刻の厳格な壁を破って、私はここに或る種の相貌の自由な現れを見出そうとした。
今日までの私の彫刻と異った一つの貌が、そして一つの世界が此の実験の上に可能にされつつあると思っている。…(後略)(*1)なかなか難しげな文章ですが、この中で「二つの」という部分と、作品の制作を「実験」と呼んでいる部分は、重要なポイントです。
また、建畠は「私の作品というのはいつも二律背反性があって…(中略)…幾何学的要素と有機的要素との共存と競めぎあいが出ていて」(*2)とも語っています。これらの言葉から、建畠の作品は、彫刻の可能性を求める試みであること、そこには相反する二つの要素が共に存在していることがわかります。
建畠は、〈貌2〉を発表した当時、有機的抽象ということを盛んに主張するとともに、空間造型の理論化を試みていました。〈貌2〉の前に発表された作品〈核〉では、そこに実際に存在する物体と、物体に囲まれることで現れる空洞、中央への集中と外への拡散などの要素の組み合わせによって、空間が構成されています。これは無機的な抽象による造型の可能性の実験といえます。
これに対して、〈貌2〉は、作家の持つ人間像などを有機的に定着させようとする実験といえるでしょう。もちろんこの場合も、空間の構造は問題となります。無機的な造型に人間像の有機的な定着を試みるということです。その実験の結果については、抽象彫刻の厳格な壁が破られ、これまでとは違った新しい彫刻の貌が現れつつあると、コメントではまとめられています。
建畠は「私の場合は…(中略)…見る人に幅広く考えてもらいたいという気持ちがある。これが彫刻だ、どうだ見ろ、というのではなくて、それぞれ見る人によって全然違った考え方を持っていいから、広く考えてもらいたい、一緒に考えようということで作品を作っている」(*3)とも云っています。新しい彫刻の貌は、よく構築され、発表から約50年たった現在でも、意味を持ち続けられているか。ぜひ、作品をよく見て、深く考え、実験を検証してみてください。
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●建畠の言葉等は次より引用しました。
*1 特集・秋季展覧会〈作品と作家のことば〉行動
「美術手帖」 1956年11月号 美術出版社
*2 特集 建畠覚造の世界 明日への模索と実験-建畠覚造
「現代彫刻」 56号 聖豊社 1982年
*3 *2前掲書
徳島県立近代美術館ニュース No.52 Jan.2005 所蔵作品紹介
2004年12月
徳島県立近代美術館 安達一樹
2004年12月
徳島県立近代美術館 安達一樹