徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
無題
1988年
木炭、黒鉛 紙
243.8×152.4
ロバート・ロンゴ (1953-)
生地:アメリカ
データベースから
ロンゴ無題
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所蔵作品選1995 美術館ニュース

ロバート・ロンゴ 「無題」

吉川神津夫

 ロバート・ロンゴは1953年、米国・ニューヨーク出身の作家です。その活動は、絵画にとどまらず、ビデオ、パフォーマンス、音楽と広い範囲に及んでいます。
 この作品「無題」は、ロンゴを代表する「メン・イン・ザ・シティーズ」という連作の一つです。連作の作品はすべて、同じように黒いスーツやドレスに身をまとった男女がさまざまに体をねじらせた姿が描かれています。見方によって、撃たれたようにも、踊っているようにもみえるかも知れません。
 ロンゴは、このイメージのヒントを映画のシーンから得たのです。これは、彼がペキンパーの映画の中で、さながらアクロバットのように人が殺されるシーンに興味をもったことに始まります。
 ロンゴは自分の友人たちにピンポン玉を当てて、体をねじらせ、その様を撮影した写真を基に作品を描きます。その際、モデルをそのまま描くのではなく、より劇的な効果を上げるために、例えば、頭部と胴体が別の人物であったりするのです。また、黒の衣装がまとわれるのもこの時です。こうして生まれた作品が醸し出す不安の由来を彼の暮らすニューヨークに求めることもできるでしょう。さらに、「無題」のこの作品が、場所を問わず、現代の都市生活の不安を物語っているとも考えられます。
毎日新聞 (四国のびじゅつ館)67 
1996年11月23日
徳島県立近代美術館 吉川神津夫