徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
学芸員の作品解説
片腕をあげて座る女
1930年
テラコッタ
h.31.0
1930年
テラコッタ
h.31.0
アンリ・ローランス (1885-1954)
生地:フランス
生地:フランス
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ローランス片腕をあげて座る女
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所蔵作品選1995
アンリ・ローランス 「片腕をあげて座る女」
吉原美惠子
美術館では現在、所蔵作品展で、「ピカソと日本」に関連して、ピカソと交流のあった作家たちの作品を展覧しています。今回はキュービスムの彫刻家であるといわれる三人の立体作家を紹介します。キュービスムというのはふつう立体主義と訳される二十世紀の初めにピカソやブラックによって提唱された芸術運動です。対象のかたちを分析し、単純で幾何学的な形態に置き換えて平面上に再構成しようとした試みです。オシップ・ザッキン(1890-1967)は、旧ロシア領リトアニアに生まれました。イギリスを経てパリに渡り、ロダンの影響を受けた彫刻を制作していましたが、1913年、ピカソと出会いキュービスムの視点に目覚めました。この後、キュービスム的な空間におけるリズミカルな面の構成と、表現主義的な作風の作品を造りだしました。ザッキンは、プリミティブ(原始的)な感覚を取り入れつつ静かな主張を備えた独自のスタイルを築き上げました。面と光の効果を大切にした造形作家で、たとえば、展示中の「立つ女」は後ろ姿の美しさも絶品で、面にこだわった作家の姿勢がよくうかがえます。
同じリトアニア出身のジャック・リプシッツ(1891-1973)もパリに出て、ピカソをはじめとするキュービスムの芸術家たちの影響を濃く受けた彫刻を制作しました。キュービスムの理論に触れた最初のころは、アフリカの彫刻にも影響され、直線的な造形を好んで制作しました。そして幾何学的、抽象的な作品を制作するようになりアンリ・ローランス(1885-1954)とともに、ピカソが試みようとした三次元へのキュービスムの応用を受け継ぎ、純粋抽象の作家としてよく知られるようになりました。
そのローランスはリプシッツとは対照的に有機的、自然主義的な抽象形態の創造に努めました。ローランスは最初、パリで装飾的な彫刻を制作していましたが、キュービスムの運動を知るやその運動に参加し、キュービスムの絵画の理論を彫刻に適用しようと努めました。ザッキンやリプシッツにみられる面の処理とはすこし趣のちがった作風で、直線的な形態と直結されがちなキュービスム彫刻のなかでまろみのあるやさしい作風で知られます。展覧中のテラコッタ作品「片腕をあげて座る女」は温かみがあり、ローランスのめざしたものをよく表しています。
徳島新聞 県立近代美術館 08
1990年11月28日
徳島県立近代美術館 吉原美惠子
1990年11月28日
徳島県立近代美術館 吉原美惠子