徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
学芸員の作品解説
ルイズ・ニーヴェルソンの肖像
1981年
(本体)鉛筆、油彩 木、石膏 (背景)キャンバスに着色
137.2×183.5×198.1
1981年
(本体)鉛筆、油彩 木、石膏 (背景)キャンバスに着色
137.2×183.5×198.1
エスコバル・マリソル (1930-)
生地:フランス
生地:フランス
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マリソルルイズ・ニーヴェルソンの肖像
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所蔵作品選1995
徳島新聞 美術へのいざない
エスコバル・マリソル 「ルイズ・ニーヴェルソンの肖像」
吉原美惠子
エスコバル・マリソルは1930年、ベネズエラ人を両親にパリで生まれました。パリとアメリカ合衆国のそれぞれの地で美術を学び、50年以降は主にニューヨークで活躍することになります。彼女は最初、絵画を学びましたが、そのうちに彫刻に興味を示すようになり、木やさまざまな素材をくっつけたり、組み合わせたりしながら具象的な作品を造るようになりました。そのモチーフは、独特の観察力の優れた目を通して見た現実の世界にあるもので、身近な人たちの肖像彫刻とでも言える作品などでよく知られています。
この作品は、ルイズ・ニーヴェルソンをモデルにしています。ニーヴェルソンもマリソルと同じく女性の立体作家で、色を付けた木を組み合わせて家具のような、楽器のような不思議な抽象形態を創り出しました。彼女はマリソルにとっては尊敬すべき大先輩でした。知的な顔立ち、真っすぐに前を見据える瞳、結ばれた口もとに漂う芯の強さなど、随所にモデルの個性がうかがえます。
そのように端座しているニーヴェルソンの膝に置かれた手は、石膏で生々しく型どりされて造られており、大いに存在感を増しています。そのしわの一筋一筋に、この女性美術家の歩んできた道のりの遠さ、険しさをうかがい知ることができるでしょうし、それらを克服してきた自身と威厳が全身に満ちていることも感じとれるのではないでしょうか。
マリソルは、そんなニーヴェルソンの生き方を敬愛し、彼女の人生をたたえるために、この美しい作品を造ったに違いありません。人生を前向きに歩んできた老女の瞳に、ごまかしのない、透明な意志の輝きを見ることでしょう。
毎日新聞 (四国のびじゅつ館) 学芸員が選ぶ5
1995年7月8日
徳島県立近代美術館 吉原美惠子
1995年7月8日
徳島県立近代美術館 吉原美惠子