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徳島県立近代美術館の出前(出張)授業について

森 芳功

(とくしま美術 No.34 2005年3月 徳島県中学校美術教育研究会)所収

徳島県立近代美術館の出前(出張)授業について

 近年、徳島県立近代美術館は、学校教育と連携した活動に力を入れています。展覧会場で、児童生徒の年齢に応じた説明を行っている他、中学校職場体験実習の受け入れ、学校に出向いた出前授業もはじめています。ここでは、その中の出前授業について簡単にご説明します。

 まず、ご紹介したいのは、「鑑賞シート」を使った出前授業です。「鑑賞シート」とは、当館の所蔵作品を取り上げ、学校の授業でも使えるように現場の先生方や大学の研究者と共同で開発した教材で、導入となる問いかけと解説、色校正を重ねた図版から成っています。作品鑑賞の手がかりのない生徒にも、鑑賞の方法を学んでもらえるよう工夫されています。

 出前授業ではまず、シートの図版をよく観察させ、生徒の身近なものとの関連や差異を見いだす促しのなかで、作品との接点をつくり、自分なりに持った感想が鑑賞の出発点となるよう励まします。そして、さまざまな見方、感じ方のあることを交流するなかで、観察と感想を結びつける「こつ」をつかんでもらいます。また、より深い解釈とつながるよう、作家や作品について最低限の知識も適宜与えていきます。「鑑賞シート」は、このような鑑賞の授業をやりやすくするためのツールなのです。

 画面の細かな部分の観察や、作品の大きさを実感するためには、実際の作品を見ることが必要になってきますが、当館の所蔵作品を取り上げているため、学校での授業と実際の作品鑑賞を結びつけることも可能です。事前の授業を受けていると、作品鑑賞のとき、驚くほど効果が表れるようです。

 実はこの「鑑賞シート」、出前授業のためだけでなく、主に学校の授業で使っていただくために作られています。「指導の手引き」も作成しました。先生方が、これを材料の一つとして授業を独自に展開していただくとともに、学芸員による出前授業でも経験を交流できればと考えています。

 さて、近代美術館の出前授業はこれだけではありません。中学校では、スライドで作品をいろいろと紹介する授業など、美術館活動の蓄積を生かした出前授業にも取り組んでいます。実をいえば、現在出前授業は小学校が先行していて、実技と関わらせて鑑賞を組み込んだり、先生方と教材を共同で開発して授業を行ったりするなど、いくつもの例が生まれています。たとえば、水彩画の写生と関わらせて、技法を含めた水彩画の説明をする授業や、「ダリさんとお話をしながら」という図工科を核とした総合的単元の一こまで、ダリの作品によるパズルを使った鑑賞の授業も行っています。遠足などの事前授業として、展覧会や出品作品の説明をすることもあります。

 当館には8人の学芸員がいますので、さまざまなテーマの出前授業が可能です。専門分野は、日本の洋画、日本画、海外の洋画、彫刻、日本の現代美術、海外の現代美術、版画・デザインに分かれ、徳島の美術については、手分けして調査に当たっています。これまで、特別展を見た先生から連絡をいただき、展覧会の内容と関連した出前授業ができたり、美術館の講座がヒントとなって出前授業となったりするなど、そのきっかけはさまざまです。もちろん、学校の実状にあった授業とするためには、オーダー・メイドの要素が必要ですが、美術館の学校連携担当にご連絡をいただければ、各専門分野の担当学芸員と先生方との間を取り持ちながら、いい形で実現させていきたいと思っています。

 いずれにしろ、中学校での出前授業はまだまだ始まったばかりです。先生方に、学校のこと生徒のことをお教えいただきながら、取り組んで行ければと思っています。どうか、よろしくお願いします。森 芳功(徳島県立近代美術館専門学芸員 学校教育との連携担当 *tel 088-668-1088)