多くの人の眼が「名品」をつくる
この20点を除く出品作品は、美術館で選びました。美術史的な評価や位置づけ、まとめて見たときのバランスなど、さまざまな角度から検討を重ねています。
はじめ、「ベスト300」まで絞り、さらにそこから出品作品を選ぶ作業を行いました。つまり本展は、美術館が選んだおすすめ作品と、県民投票で選ばれた作品から成っており、そこが見所となっています。プレイベントでは、収蔵庫見学を含む「体験ツアー」を3回行い、お客さまの声を直接聞くこともできました。面白いのは、同じ作品を見ても、さまざまな見方や捉え方があることです。「投票用紙」には、選んだ理由を書いていただく欄を設けましたので、多くの感想を知ることもできました。ピカソ〈赤い枕で眠る女〉の投票用紙からいくつかご紹介しましよう。
「寝顔もやさしくて、あったかい気持ちになりました」、「すやすや気持ちよさそう」、「線がきれい」、「心がほっとしました」、「色が好き」などなど。「票」の少ない作品にも、いい言葉が記されていました。このような感想に触れると、優れた作品には、多様な感じ方を引き出す懐の広い魅力があることに気づかされます。
作品は、批評の積み重ねのなかで評価を高めていく面があります。当館のコレクションも、専門家だけでなく、多くの方が鑑賞し、感想を交換することで、「名品」として知られ、魅力に磨きがかかっていくのだと思います。
美術館のコレクションは、その地域にあって、何度も、そして世代を超えて鑑賞することができる文化的な宝です。今回の展覧会が、新しい時代に向けてコレクションの魅力と意義を再発見する機会となるのを願っています。 (専門学芸員 森 芳功)

展示解説の様子

プレイベントの体験ツアー