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はじめに
「謎以外の何を私は愛するだろうか?」
  この言葉は、この展覧会で紹介するジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978年)が1911年に描いた自画像の下端部にラテン語で記したものです。彼が本格的に絵を描き始めてから間もなかったこの時期に自画像に、そう記されていることは、まるでこの後の制作活動を予言していたかのようです。それでは、「謎」を愛するデ・キリコはどのような作品を生みだしていったのでしょうか。まずは、彼の生い立ちから見ていきましょう。

ヨーロッパを彷徨うイタリア人
 デ・キリコはイタリアが生んだ20世紀の巨匠として知られています。ところが、彼がイタリア人の両親から生まれたのは1888年ギリシアのテッサリア州ヴァロスでのこと。鉄道技師をしていた父親の仕事の関係でした。幼少時はキリシア国内を転々とし、アテネに暮らしていた1899年に本格的に絵を学び始めました。1905年に父が没した後、1906年に一家はミュンヘンに移ります。彼は当地の美術アカデミーでも引き続き絵画を学びました。
 デ・キリコが暮らしていた時期のミュンヘンは、ヨーロッパの中でも前衛美術が台頭していた都市の一つでした。ところが、彼はこうした動きには全く関心を示さず、当時では古めかしいものとされていた後期ロマン派のマックス・クリンガーやアーノルド・ベックリンの絵画に興味を持ったのです。
  短期間のフィレンツェ滞在をはさんで後、今度は1911年から15年まではパリに移ります。この時期に詩人アポリネールから注目され、彼は本格的に画家の道を歩むようになったのです。
 それでは、これからいくつかのテーマに絞って、デ・キリコの作品を見ていきましょう。

 
 
 

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