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さて、藍染めです。先にも述べたように、濱谷は糸という素材の「素」を立地点としています。
これに合わせて、藍染めもシンプルを基本としました。藍染めで、藍の葉を発酵させた「すくも」を液状にして染色できる状態にすることを「藍を建てる」といいます。藍を建てるのにも、
その過程でどのような材料を使用するかで、いろいろとあります。
今回は素にこだわる観点から、できるだけ材料の少ない技法で藍を建てる木灰汁発酵建で 染めている染師の村上千晶に依頼しました。
濱谷の作品は、糸という素材がその「素」によって空間に反応し、反応した「形」はその空間を明らかにします。これをなぞれば、藍染めの糸による作品では、糸に施された藍染めもまた、藍の「素」によって空間と反応し、反応した「形」としてその空間での藍が明らかになるといえるでしょう。
美術の分野では、藍の「素」は色といえますので、明らかにされるのはその空間での藍の色合いとなります。
今回の展示作品は、全てが藍染めというわけではありません。
白い糸による大作や、黄色を始めとする人工的な色の糸を使った 作品もあります。それらと共に展示された藍染めの作品に向かい 合ったとき、空間の造形を体感するとともにあらためて 「藍の色はいいなあ」と思っていただければ幸いです。
(専門学芸員 安達一樹)
濱谷展資料画像