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特別展
森口ゆたかーあなたの心に手をさしのべてー
2011年4月29日[金・祝]ー6月26日[日]
美術家への道
1960年、美術家の森口宏一と嫁ぎ先の家業を切り盛りする久見子の許、森口ゆたかは大阪に生まれました。二人目となる女の子にも優しく、まろい人になってほしいという両親の願いは、その大らかな字面の「ゆたか」という名に託されました。自宅には父・宏一の周りに多くの表現者たちが集い、それを見ては「アーティストは貧乏かも知れないけれど、じつに心の美しい人たちだ」と母が言うのを聞いて、大きくなったら自分も、「彫刻」とやらを創る人になるのだと幼い頃から思い描いていたといいます。小学校の頃、ランドセルを背負って登校する森口に「行ってらっしゃい」と声を掛けるのは、前夜から朝まで飲み明かし、芸術談義に耽っていた大人たちでした。そして、放課し、帰宅したときも「まだ、おった!」と驚き、あきれたものだと森口は懐かしそうに語っていました。そのような環境で、森口は美術家として生きる覚悟をじっくりと固めていったのでしょう。大阪芸術大学で絵画を専攻し、シカゴ美術館附属芸術大学大学院で彫刻を学びました。恵まれたスタートだったともいえますが、作家である父の背中はいつも大きく、目の前に立ちはだかっていました。