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5 ジャーナリズム
ラタランガ アヴァンティ(前進)紙   19世紀には、機械化の進展で印刷物が安価に製作できるようになり、また大衆的な読み物への需要も高まって、特に世紀末には新聞や雑誌が広く普及します。マスコミュニケーション(マスコミ)の発達です。
 先にふれたカフェやキャバレーでも、人々は単に楽しむだけではなく、文化を、そして社会や政治を語り合いましたが、マスコミは大衆が政治や文化に関わる機会を更に増大させます。
  様々な言論活動や文化発信のメディアとして、大きな役割を果たした新聞や雑誌それ自体を宣伝するポスターには、絵の力に加えて、文字の書体に工夫を凝らし、言葉の力を生かしたポスターも目につきます。

【図版】 ラタランガ 〈アヴァンティ(前進)紙〉※社会主義の新聞 1900年 宮城県美術館蔵 

ファイーニ ローマ万国博覧会

6 万博・観光・スポーツ・・・
  18世紀末に始まった博覧会は、19世紀に国際的な万国博覧会となり、世紀末頃にはその隆盛期を迎えます。万博には人や物が集まり、そこから新しい産業や流行が発信されていきます。
  他にも、集客力のあるスポーツ・イベントや、交通機関の発達に伴う旅行や観光の発展などにより、人々は集まり、移動して、新たな消費が拡大します。このように、新しいものを次々に追い求めていく近代という時代において、宣伝ポスターは不可欠なものとなっていくのです。

 

【図版】 ファイーニ 〈ローマ万国博覧会〉 1908年 宮城県美術館蔵

おわりに
  新たな時代への憧れや希望、そして情熱や欲望を喚起し反映する、古き良き時代のイメージ。それらは懐かしく古いだけのものなのでしょうか。ポスターや広告は、現代の私たちにとっても身近な存在です。実用性と芸術性を兼ね備えたアートは、私たちのすぐ近くにもあるのかも知れません。

(専門学芸員 友井 伸一)
(徳島県立近代美術館ニュース No.69 掲載)

*1アール・ヌーヴォー
フランス語で「新しい芸術」。19世紀末にヨーロッパで流行した美術の傾向。有機的な曲線を多用した装飾性、平面的な空間などを特徴とする。建築や工芸の世界にも広く普及した。
*2「三浦コレクション」は三浦永年・ティニご夫妻(共に製本装幀家。永年氏はマーブルペーパー制作者としても知られる)が収集し、宮城県美術館に寄贈されたもの。

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