特別展
大 正 ロ マ ン 昭 和 モ ダ ン 展
 - 竹久夢二・高畠華宵とその時代
 2008年4月26日[土]-6月22日[日] 小早川清 近代時世ノ内ほろ酔い


はじめに

 この展覧会は、浮世絵研究家として有名な中右瑛氏の監修により、大正から昭和初期に活躍した画家たちの幅広い活動を紹介するものです。時代の寵児として一世を風靡した竹久夢二と高畠華宵を中心に、大正ロマン・昭和モダンを彩る作家の日本画、版画、挿し絵原画から絵葉書や楽譜、装幀本などにより、大衆アートの時代を振り返ります。

【右図版】 小早川清 〈近代時世ノ内 ほろ酔ひ〉 (木版画)

時代背景
 この展覧会の舞台となる大正から昭和初期は、サラリーマンを中心に「大衆」が形成され、社会や人々の暮らしが大きく揺れた時代です。
 明治以来の西欧化と近代化は、この時期に都市部において一定の成果を見せます。教育の普及、新聞発行数の増大、相次ぐ雑誌の創刊、映画やラジオ放送の普及などによる情報の一般化、レコード産業が興隆し、カフェーやバーも珍しくなくなります。マスメディアによってもたらされる享楽的な消費文化が形成された時代といえるでしょう。一方で、社会的には、第一次世界大戦による成金の出現とその後の不況、関東大震災、昭和恐慌、護憲運動と軍国主義への足音、労働争議や民衆騒擾の頻発、都市への人口集中と階層化、都市と地方の格差の拡大など、現代に通じる暗い世相の時代でもありました。
 その時代を反映して、この時期の文化は、文明の進歩による新しくモダンな感覚と大衆を取り巻く社会不安による退廃的で虚無的な気分を併せ持つものでした。

大衆アート
 このような時代を背景に、印刷メディア・出版文化の興隆に伴って花開いた新聞や雑誌の挿し絵、装幀、イラストなどを、中右氏は「大衆アート」と呼んでいます。
 この展覧会では、大衆アートを代表する竹久夢二と高畠華宵、それに続いて挿し絵で人気を集めた抒情画家たち、そして、時代の風俗を映す日本画、オリジナル性にこだわった「創作版画」と浮世絵版画の流れを汲む「新版画」などを紹介します。

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Copyright:徳島県立近代美術館.2008