徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
学芸員の作品解説
鳴門
1949年
紙本着色
218.5×139.7
1949年
紙本着色
218.5×139.7
池田遙邨 (1895-1988)
生地:岡山県
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池田遥邨鳴門
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徳島新聞連載1990-91
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池田遙邨 「鳴門」
仲田耕三
鳴門の渦潮は、多くの画家たちによって描かれているが、洋画家たちに比べて、川端龍子、奥村土牛、片岡球子、杉山寧、加山又造、沢宏靱、平川敏夫など、日本画家たちの方が数多く描いている。これは、海浜風景が伝統的な山水画の画題として、日本画に代々受け継がれてきたことによるものと言えよう。特に奥村土牛の「鳴門」は、渦潮を神秘的に描き上げた現代日本画壇の最高傑作の一つとして高く評価されているが、池田遙邨の「鳴門」もまた、土牛の「鳴門」とは趣を異にした代表作の一つと言えよう。
池田遙邨は、初め洋画を学ぶが、その後竹内栖鳳に師事し日本画に転じる。当初は、洋画風の写実表現を基調とした日本画を描くが、大和絵をベースとした作風へと移り、その後富田渓仙の画風に共鳴した作品を描く。
戦後は、機知に富んだ文人的な独自の画境を開き、放浪の俳人種田山頭火の句を画題とした作品を発表。その洒脱で飄々とした作風は高い評価を受け、文化勲章を受章している。
この作品は、戦後間もない第5回日展に出品されたものである。土牛の「鳴門」を静の代表作とすれば、縦長の画面にデフォルメされ、ゴウゴウと鳴る渦潮の音が聞こえてきそうな臨場感あふれるこの作品は、動の代表作と言っても過言ではあるまい。
この時期遙邨は、敗戦の混乱と復興の中で、夢想的な要素の強い作品を描いているが、それは新しい日本への希望を込めたものとも思える。
毎日新聞 (四国のびじゅつ館) 学芸員が選ぶ19
1995年11月11日
徳島県立近代美術館 仲田耕三
1995年11月11日
徳島県立近代美術館 仲田耕三