徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
学芸員の作品解説
空気の建築;ANT 119
1961年
顔料、合成樹脂 紙、キャンバス
262.0×200.0
1961年
顔料、合成樹脂 紙、キャンバス
262.0×200.0
イヴ・クライン (1928-62)
生地:フランス
生地:フランス
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クライン空気の建築;ANT 119
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所蔵作品選1995
徳島新聞連載1990-91
イヴ・クライン 「空気の建築;ANT 119」
友井伸一
2人の女性といくつかの樹木、そしてそのまわりで飛び跳ねる数人の小さな人物。これらはすべて、青一色の中に白いシルエットで表現されています。型紙のようなものの上から、絵の具をスプレーで吹き付けるわけですが、中でも大きな2人の女性の姿は、妙になまめかしく見えます。それもそのはずで、これら女性のシルエットは、実は本当の人体を型にしています。さらに、胸や腹、腰、太ももなどの部分は、人体に絵の具を直接塗って押しつけたものです。このことから、作品名の「ANT」が、フランス語で「人体測定」という意味のアントロポメトリー(Anthropometrie)の略語であることもうなずけるでしょう。
上方の女性は、まさに空中に飛び上がった瞬間の姿勢を取っています。彼女が身を投げ出す空間は、空気の屋根、そして火や水の壁などの純粋なエネルギーのみで出来上がった世界です。クラインは、それを未来の新世界、すなわちエデンの園として想い描きました。作品名の「空気の建築とは、それを実現するための具体的な設計図を意味するのです。
クラインにとって空を飛ぶことは、新世界を探り、その世界と人体が一体化することでした。「絵画とは、人体による精神的空間の発見である」という彼の言葉通り、クラインは人体を測定し、そして人体を空間へ投げ出すことで新しい世界を推し量ったのです。
また、ここで使われている青色は、クラインによって「インターナショナル・クライン・ブルー」と命名されたものです。ウルトラマリン・ブルーの純粋な顔料の持つ輝きを生かしたこの青色は、クラインの理想郷において、根源的な色彩としての役割を果たしています。
毎日新聞 (四国のびじゅつ館)73
1997年2月1日
徳島県立近代美術館 友井伸一
1997年2月1日
徳島県立近代美術館 友井伸一