各部門ごとに審査を行い、受賞者が決定いたしました。

展示部門グランプリ 小さな絵の物語

展示部門審査員特別賞(1) 中川彩

展示部門審査員特別賞(2) 亀井俊治

パフォーマンス部門グランプリ ユーゴウ団×保育士ヒーローブレイク

パフォーマンス部門審査員特別賞 ロス・ボラッチョス(川竹道夫・鈴江彰)

審査員講評

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作者 

小さな絵の物語


作品名 

小さな絵の物語


制作年 2010年
技法・材質 ポストイットカードに彩色


今年の5月に作業中の事故で2ヶ月間の入院生活の後、4ヶ月リハビリ生活を送りました。
1ヶ月間ベッドで上を向いて寝たままで、私は空を飛ぶ夢を見ました。
少しずつ起き上がれるようになって病室でそばにあったポストイットカードに色鉛筆で絵を描きました。
私にとっては夢を見続けることが、大切なんだと気づきました。

「独自の世界を確立している。ポスト・イットというものをうまく使って表現している。
絵と文章の構成が巧で、観客を引きつける魅力があり、文句なしでチャレンジとくしま芸術祭展示部門のグランプリ受賞となった。」

 



作者 

中川 彩


作品名 

「桶の中」
「室内楽」
「マネキン」
「アパート」
「店番T」
「店番U」


制作年 2010年、2011年
技法・材質 油彩、和紙 石膏粘土 布 油彩


徳島県海南町(現・海陽町)生まれ 香川県高松市在住
2007ー2010年「中川彩イラストレーション展」香川県立図書館
2010年巡回展「アパート・ペチカ」IKUNASギャラリー(高松市)

見る人の中に物語が浮かぶような作品を作っていきたいです。

「独自の世界を確立し、それを表現する力を持っている。
人形を置くことで、空間へ展開することの可能性を見せたことにチャレンジ性を感じる。」

 



作者 

亀井 俊治



作品名 

「海Tー鳥はどこへ飛ぶのかー」
「海Uー美しさと強さを湛えてー」
「海Vー貝殻のビーナスへのオマージュー」


制作年 2010年
技法・材質 フレスコ




1960年徳島県生まれ 鳴門中学校勤務
忙しい。毎日一生懸命生きている。休みたーいって思う。その合間に時々描く。
 ここ数年ぼくは初日の出の海を描いている。
自然は劇的に変化したり、海面のように絶え間なく変化しながら、本来の姿を失わない懐の深さを感じさせる。
 フレスコはしっくいの上に絵を描く古典技法だ。それを現代人の感覚で表現してみたい。


「現代において、フレスコ・ストラッポという特殊な技法を用いていることにチャレンジ性を感じる。」

 


出演者 

ユーゴウ団×保育士ヒーローブレイク


演目・曲目 

「ユーゴウ団×保育士ヒーローブレイク」
〜夢のコラボは音の彼方へ〜


出演者詳細 

ユーゴウ団員 サックス・眞田、徳永、善家、竹中
指揮・与那覇
保育士ヒーローブレイクメンバー




新たな舞台芸術へ挑戦している「ユーゴウ団」と徳島県内外で活躍している「保育士ヒーローブレイク」の音楽とヒーローショーのコラボです。
迫力の演奏がブレイクの燃えるハートに火をつけること間違いなし!
熱いステージを最後まで観てくれよな!


「子どもから大人まで楽しめる内容であった。
出演者は多かったが、全員にパフォーマーとしての質の高さを感じた。
ヒーローショーとサックス四重奏のコラボレーションという意外性が面白い。
昨年とは違った趣向で参加したことにチャレンジ性があり、文句なしのグランプリ受賞となった。 」

 



出演者 

ロス・ボラッチョス(川竹道夫・鈴江彰)


演目・曲目 

ルンバ・ブラッチョ (ギター二重奏)
ブレリア (ギター二重奏)
シギリージャ (ギター&三味線)
弥三郎節 (ギター&三味線)
津軽じょんから節 (三味線二重奏)


「津軽三味線は日本のフラメンコだ!」
アンダルシアと津軽、互いの音楽は全く違ったものであるにもかかわらず、日本人やスペイン人の心を揺さぶる、共通の感情があるらしいのです。津軽三味線によるフラメンコ奏法の試みや、フラメンコ奏法による津軽民謡など、2台のフラメンコギターと、2台の津軽三味線から生まれる絶妙のコラボレーションをお楽しみください。

演奏曲目:ルンバ ブレリア シギリージャ 津軽タント節 津軽じょんがら節


「日本民謡やフラメンコを三味線+ギターで演奏するチャレンジ性・実験性が高く評価された。
それを支える演奏技術の高さに加え、大人の遊び心を感じられた。」



展示部門パフォーマンス部門

審査員のうちで表彰式(平成23年1月23日)に出席いただいた方による講評の概要です。

■展示部門■

森惠子 (審査委員長・徳島県立近代美術館長)

審査が非常に難航し、苦労した。受賞された方については次の通りである。

グランプリ 「15 小さな絵の物語」さん
身近にあるもの(ポストイット)をうまく利用し、絵と文章の組み合わせが巧みである。
紙の長さなどにもリズム感があり、目をひきつける独特の世界を持っている。

査員特別賞 「2 中川彩」さん
独自の世界を確立しており、それを可能にする表現力を兼ね備えている。
また絵に加えて人形を一緒に展示することで、世界が展開している。

審査員特別賞 「23 亀井俊治」さん
フレスコ・ストラッポという珍しい技法をもちいており、そのことで画面にひび割れなどが生じているが、そのことがかえってあやういイメージを出現させていて魅力的である。

受賞者以外の方にもすばらしい方が多く、これからも皆さんのチャレンジをお待ちしている。


平木美鶴(徳島大学教授)

多くの優れた人が徳島にはまだまだ眠っていることに改めて気づいた。審査は長時間にわたった。

受賞者以外の方への寸評は次の通りである。
「2 大貝貞雄、大貝寿子」さん 
昨年も参加されていたが、昨年以上に空間に挑戦されていた。

「17 井内晃俊」さん、「16 多田信二」さん
立ち止まって、ずっと見入ってしまった。多田さんには、閉じられた世界の中に何かしら魅力がある。

「19 なる川佳代」さん
非常に味のある絵で、不思議な雰囲気に心ひかれた。

「36 マリとマザー」さん
すがすがしく非常に気持ちがよい。なかなかああいう壁の使い方はできないので、いいなと思った。


他にも個性的な作品が多く、楽しませてもらった。来年も楽しみにしている。

吉田尚行(四国大学教授)

従来の尺度だけではかれない幅広い視点が必要であると感じ、何度も会場を行き来した。
出品者の方々の、今回の展示への期待や「見てもらいたい」という気持ちが伝わってきて、敬意を表したい。
このような広い場所で、また限られた人々だけでなく、幅広い層の方々に見てもらえる機会は数少なく、この展覧会がますます発展することを願っている。

素材の生かし方が、一つのポイントであると感じた。
陶芸による出品者には、基本的な技術に加えて独自性に向かっていく努力を感じた。
また紙でいえば、書道の出品では、書としてのみならず、墨のにじみや、素材としての紙の特性などの観点、そして文字のメッセージ性など、いろんな面から見ていった。木や、紙、あるいは身近なものなど多様な素材が使われていた。

エネルギーは感じたがメッセージ性がもっとほしいと感じる作品や、個人的なテーマであるが、それを深めていくことで普遍的なものへつながる可能性を感じるものもあった。

安達一樹(徳島県立近代美術館専門学芸員)

難しい審査だった。それぞれがオンリーワンだが、それをいかに磨き輝かすことができるかが、このチャレンジのポイントだと思う。そのため、いい作品でも、これまでの作品の延長だと感じると、採点が厳しくなった面はある。

「15 小さな絵の物語」、「16 多田信二」、「17 井内晃俊」、「18 福島匠」のみなさんは、それぞれ自分の世界があり、それをどう出していくのかという点が共通していた。
多田さんは、ふれられたくないような自分の内面を潔く認めてだしている点に、次へのステップアップの可能性を感じた。福島さんの船は、過剰なぐらいにいろんなものが作り込まれていて大変おもしろい。ただ実際に動く船だけに、そのおもしろさが今回の静かな展示で十分に生かすことができなかったのが少し残念である。

「28 尾田稔子」さん
大きな会場に大きな作品を出品する、というのは良いと思う。ただ、「大きいものを置けば大きく見える」のかどうか、というのは難しいところで、スケール感、その空間をどう生かすか、という点で、さらにもう一工夫が求められる。

「37 原田史郎」さん
大きくて、いい作品だが、少し以前に制作されたもの(2005年)だったので、「この展覧会に向けて制作した」といった意欲が見えると、もっと評価は上がった。

「38 森ユキ」さん
作品の善し悪し以上に、「マイケル・ジャクソンが好き」というパワーをすごく感じて、素敵だと思った。

個々の皆さんが持っている輝くもの(原石)を、「チャレンジとくしま芸術祭」へ出品することでどんどん磨き、これからも素敵な作品を制作していってもらいたい。

 

■パフォーマンス部門■

森惠子(審査委員長・徳島県立近代美術館長)

展示部門同様に困難な審査であった。

グランプリ 「3 ユーゴウ団×保育士ヒーロー ブレイク」さん

ヒーローショーと、サックスの生演奏による四重奏とのコラボレーションの意外性、そして演奏者自身もヒーローショーに参加していく点などが高く評価された。 また出演者が非常に多かったが、その全員がパフォーマーとしての意識を高く持っており、たとえ隅っこにいる人でもきちんと役割を果たしていて、質の高さも感じた。
子供から大人まで楽しめる内容であった。ユーゴウ団は昨年も参加していたが、全く違う趣向であり、そこにもチャレンジ性を感じた。

審査員特別賞 「15 ロス・ボラッチョス(川竹道夫&鈴江彰)」さん
ギターと津軽三味線の組み合わせで、日本民謡やフラメンコを演奏したが、その演奏は、ギターを三味線風に、あるいは三味線をギター風になどと、チャレンジ性、実験性にあふれており、高く評価された。
それは本来の高い演奏技術の裏付けがあってこそである。そこに大人の遊び心というようなものも加わり、楽しそうな雰囲気が伝わってきた。

出演された皆さんが、初めは緊張の面持ちでも、しだいに満面の笑顔になっていく様子を見て、パフォーマンスの楽しさが本当に伝わってきた。
今回初めて見たものもあり、すてきな人々が徳島にもまだまだたくさんいるのだなと、しみじみ感じた一日だった。


小西昌幸(北島町立図書館・創世ホール館長)

去年は審査委員長の大役で神経がすり減りましたが、ことしは気持ちが楽になっております。
今年も幅広い方々の参加があり、私ども審査員としては全員の方にグランプリを差し上げたいぐらいの気持ちなので、どうかたまたま受賞されなかったからと言って、「こうなったら不良になってたばこを吸ってやる」とか「朝から酒を飲んでやる」とかやさぐれたりすることのないように、お願いしたい。

グランプリ 「3 ユーゴウ団×保育士ヒーロー ブレイク」さん
昨年とは全く異なるアプローチで楽しく、高いチャレンジ精神を感じた。ほとばしる才気に感服した。

審査員特別賞 「15 ロス・ボラッチョス(川竹道夫&鈴江彰)」さん
日本民謡やフラメンコを、三味線とギターでクロスさせる様なチャレンジ精神が評価された。

(受賞者以外で)
「6 新田千恵子」さん
1人でカリンバを奏でながらの朗読で、声が朗々と良く通り、落ち着きがあって大変よかった。
展示部門に出品されていた、折りバラアートの展示物にも圧倒され、才能を感じた。

「14 ENSEMBLLE Tomoi Prototype」さん 
ピアノ演奏を交えながら1人でオスカー・ワイルドの「わがままな巨人」を朗読されたが、私はこの原作が小学校の頃から好きだったのでうれしかった。しみじみと感動しながら拝聴した。(本番後のインタビューで本人が答えていたような)決して残念な出来ではなかった。

「11 フラメンコサークルCharco(チャルコ)」さん
凛としたたたずまいが、かっこよいと思った。

「18 アバダ・カポエィラ四国徳島」さん
躍動感と熱気と迫力があって、非常に印象に残った。

箏曲演奏が、終盤に二つあった。
「16 津村雅登代」さん、「18 徳島邦楽キッズ」さん
それぞれこの地の将来の箏曲演奏を支える皆様が立派な演奏をなさった。かわいい子供さん達が最後に締めくくりをされて、非常にいいエンディングになったという声もあった。


武市典子(株式会社メディコムSALALA編集長)

昨年に引き続きだが、私にとって審査すること自体がチャレンジである。
次の3つの観点から審査していった。
まず、パフォーマンスのライブなので、ライブならではの力がどのくらい出せているか。次に、なにか新しいことにチャレンジしているか。最後に、これらの2点と重なる点もあるが、そこから伝わってくるものが何かあるか。たとえば気持ちや、やってやろうという心意気などが、どのくらいあるか。

グランプリ 「3 ユーゴウ団×保育士ヒーロー ブレイク」さん
本番後のインタビューでもあったように、「ヒーローブレイクに惚れ込んで、これがやりたかったんだ」という気持ちが伝わってきた。

チャレンジという点で、この芸術祭にあわせて、いつもとちがうパフォーマンスをされた方がいた。たとえば、「13 徳島大学フルバンド部」さんの、普段は38名のビックバンドを、少数精鋭のメンバーで行った点に挑戦を感じるし、「14 Ensemblle Tomoi Prototype」さんの、普段は誰にも見せずに1人でやっている部分を公開する、というところにもチャレンジ性を感じて、大変おもしろいと思いました。
「17 ハーラウ フラ チヤコエー」さんは、フラダンスと阿波踊りの融合ということが、最初はうまく組み合わさるのかと思いましたが、すごくおもしろく、アンサンブルで楽しく拝見した。このようなチャレンジが出来るのも、この芸術祭のいいところだなと改めて思った。

また「6 新田千恵子」さんは、動きも含めて引き込まれるような語りで、自分の世界が出来ていて感心した。

これだけ様々なジャンルで活動されている方がいらっしゃることに改めて感動した。そして、皆さんが笑顔でチャレンジしているところが本当にいいなと思った。優劣つけがたかったので審査は苦しいものだったが、私もこの場で審査というチャレンジをさせていただきました。

 

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