絵本
堀内は、『くろうまブランキー』(1958年)と『七わのからす』(1959年)の2作で絵本作家としてデビューしました。いずれも20歳代半ば。堀内が雑誌や広告の新進デザイナーとして頭角を現していった時期と重なります。
福音館「こどものとも」の編集長に堀内を紹介し、そのきっかけを作ったのは夫人の路子さん。ただし彼女は語ります。「そうでなくともホリウチは絵本を描くようになったと思います。」*3
『たろう』のシリーズや『ぐるんぱのようちえん』(1965年)などは、今も版を重ねる絵本のロングセラーです。また、グリムや、マザーグースなどのおなじみのお話から、「かがくのとも」シリーズの科学絵本にいたるまで、幅広い領域の絵本を手がけています。
その画風は、構成的なものから、魅力的なキャラクターの味を押し出したもの、あるいは写実的なものなど、多彩です。また絵を描くだけではなく、印刷に関わるもろもろのことに熟知している堀内は、その手法や技術もあわせて絵本作りに反映させていきます。この両者をこれほどまでに自在に駆使することのできる絵本作家は、そう滅多にいるものではありません。
「アンアン」の仕事を辞め、パリに渡った74年以降、仕事の比重は絵本に傾いていきます。さらに、自らの絵本制作にとどまらず、海外の埋もれた絵本や絵本作家の発掘・紹介、絵本批評などにも堀内の射程は伸びていきました。
【図版】上から
『くろうまブランキー』こどものとも33号 南仏フレネ幼稚園児作、伊東三郎訳 福音館書店 1958年
『おおきくなるの』こどものとも99号 福音館書店 1964年
『ぐるんぱのようちえん』こどものとも110号 西内ミナミ作 福音館書店 1965年
『こすずめのぼうけん』こどものとも241号 ルース・エインワース作、石井桃子訳 福音館書店 1976年