はじめに
まず、右の写真を見てください。首のない赤い人型の立体作品が、緑の芝生の上に寝そべっているかのようです。この作品は徳島出身の造形作家、岩野勝人さんの〈MENTAL CHAIR〉。場所は文化の森、山の上の公園です。この作品、実際にソファーのように寝ころぶこともできます。作品に頭がないのは、いろいろと考えることが多くて頭が疲れている人々に、頭のことを忘れて気持ちを開放してもらおうと意図があるのです。
この作品は2月から近代美術館で開かれる「IWANO MASAHITO 現代アートによる徳島再見」では展示室の中に出品されます。皆さんも是非寝ころんでみて下さい。そして、頭を空っぽにして目に入る作品を見れば、今まで気づかなかった「徳島」が見えてくるかもしれません。
この展覧会は岩野勝人さんが「徳島再見」をテーマにして、自らも出品すると同時に、展覧会全体の構成をしたものです。それでは、まず、岩野さんの紹介から始めましょう。
アーティスト 岩野勝人
岩野さんは1961年、徳島県三好郡三加茂町(現 東みよし町)の出身。1988年に京都市立芸術大学を卒業後、1990年に京都市立芸術大学の大学院美術研究科彫刻課程を修了しました。在学中の1980年代後半から、主に関西の画廊・美術館を中心に個展、グループ展に精力的に出品しています。また、徳島県内を始め、日本各地の野外にも作品を設置しています。ただ、岩野さんの活動は単なる作家の枠にはとどまりません。「アートと社会」の新たな関係を模索するために、異業種とのコラボレーションや美術館・学校・地域での文化活動を対象とした様々なワークショップも開催しているのです。先に挙げた、野外の作品の中にも、彼の地元である三加茂の小学生と共に制作したレリーフもあるのです。
そんな岩野さんにとって、「現代アートによる徳島再見」とは、まさにうってつけのテーマと言えるものです。それでは、一体どんな展覧会なのでしょうか。