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キュビスムってなに?
キュビスム?「ときどき聞くけれどよくわからない」という方も多いのでは、と思います。
ヨーロッパではルネサンス以降、ものの立体感や奥行きを表すために、遠近法や明暗法が用いられてきました。しかし20世紀に入り、ピカソたちは、この伝統的な手法も、結局は立体的に見せかけているだけじゃないか、と考えます。そこで、いろんな角度から見た姿を、例えば立方体(キューブ)などの幾何学的で単純な形に置き換え、もう一度「かたち」というものを、一から組立ててみようとするのです。これがキュビスム(フランス語)です。
ここでは、20世紀美術の出発点の一つ「キュビスム」を、ピカソの版画、国内で見る機会の少ないグレーズやメッツァンジェの絵画、そしてキュビスムによる彫刻等で紹介します。ほとんどは「人間」がモチーフです。一見難解なキュビスムを身近に感じる機会となれば、と願っています。
(担当:友井伸一)
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作品に光をあてる

作品と向かいあうと、美術家の仕事にはどうしても運不運がつきまとうことを感じます。生前は美術界の脚光を浴び、亡くなったあとも大切な画家として記憶され続ける作家がいる一方で、優れた仕事を残しながら、いろいろな理由から忘れ去られてしまう作家がいるのです。
歴史の彼方に埋もれてしまった作家を掘り起こし、歴史に正しく位置づけること、これも美術館の大切な仕事のひとつだと考えます。
伊原宇三郎や熊谷守一、鳥海青児らの作品は、文句なしに日本洋画史の名品です。それに対して、若くしてパリに渡り、日本の美術界と没交渉になってしまった板東敏雄、戦争中に疎開した三重県の山奥で、戦後もひっそりと描き続けた久米福衛、第二次世界大戦で戦死し、代表作と家族を戦争のために失った森堯之、彼らの作品も、これらの名品にけっして見劣りしないと思います。
(担当:江川佳秀)