〈光の刻〉ーすべての命は光の中に
私はこの作品を、森口の制作の一つの頂きを仰ぎ見ることができるものだと考えています。作品を構成する素材の多くをそぎ落とし、力強さを増した作品です。幼子がさしのべる手とそれを待ち受ける手が触れ合おうとする一刻が、明滅する電球の光に照らされている、という素直な作品でした。そして、〈光の刻〉というタイトルにもあるように、すべての人が生まれてきた瞬間、光に包まれてある、という豊かなメッセージをその簡素な作品は抱えていました。これは、いのちの誕生に寄せる祝福の気持ちをまっすぐに表し得た作品で、暗闇から浮かび上がり、つむがれてゆくいのちのリレーのありようが心を打ちました。ときに生命が尊ばれない現代社会にあって、今を生きる人たちに、自らのいのちが光を浴びた瞬間を思い起こさせるもので、ひいては、他の命も慈しむという作品でした。なんと重く、深遠なテーマを扱ったのでしょう。そして、なんと肯定的で、前向きなエネルギーに満ちた作品だったことでしょう。