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1 ミュシャとアール・ヌーヴォー
アルフォンス・ミュシャ ロレンザッチオ   ポスター芸術が広がった19世紀は、ヨーロッパの産業革命以降の近代化の時代と重なります。工業が発達し、競争が求められる経済システムのもとで、「宣伝」の有効な手段として、ポスターが隆盛を迎えるのです。そして、その実用品としてのポスターを、鑑賞や収集の対象としての価値にまで推し進めていったのが、才能あふれる若き芸術家たちでした。その一人がアルフォンス・ミュシャ (1860-1939年)です。
  チェコに生まれパリに出て挿絵画家として活動をはじめたミュシャは、1894年、当時人気絶頂の舞台女優サラ・ベルナールの舞台「ジズモンダ」のポスター制作を依頼されます。このポスターは大評判となり、ミュシャは人気作家として華々しくデビューしました。
  〈ロレンザッチオ〉も1896年ルネサンス座でのサラの舞台のポスターです。つる草の有機的な形態を生かしながら幾何学的にかたどった唐草模様(アラベスク)を背景に、こちらを向いて物思わしげなポーズを見せるサラの姿。
   時は世紀末。浮世絵の影響を受けた平面的で装飾的な空間と、繊細な曲線が描き出す華麗な世界。アール・ヌーヴォーの特徴を体現するミュシャの世界は世の人々を魅了したのです。

【図版】 アルフォンス・ミュシャ 〈ロレンザッチオ〉 1896年 宮城県美術館蔵 

2 シェレと“シェレット”
ジュール・シェレ アルカザール・デテ座    ジュール・シェレ(1836-1932年)は、ミュシャらの活躍に先立って、カラーの絵入りポスターを普及させた立役者です。リトグラフ職人として出発した彼は、華やかで明るい女性を生き生きと描いたイラストと、装飾的な文字デザインを組み合わせた作風で一時代を築きました。
  お酒や化粧品、舞台の出し物など、様々な宣伝ポスターにシェレが描いた女性たちは、ゴージャスな貴婦人ではなく、どちらかというと庶民的な陽気さと躍動感にあふれています。それはシェレット(シェレ娘)と呼ばれる流行語を生み、時代のトレンドをリードし象徴する偶像となったのです。


【図版】 ジュール・シェレ 〈アルカザール・デテ座〉 1891年 宮城県美術館蔵 

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