徳島県立近代美術館
学芸員の作品解説
学芸員の作品解説

白衣を纏える
1928年
油彩 キャンバス
100.6×81.4
1928年
油彩 キャンバス
100.6×81.4
伊原宇三郎 (1894-1976)
生地:徳島県徳島市
生地:徳島県徳島市
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伊原宇三郎白衣を纏える
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徳島新聞連載1990-91
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伊原宇三郎 「白衣を纏える」
江川佳秀
この作品は、伊原宇三郎がフランスに留学していた時代の一点です。赤褐色を基調としたわずかな色彩で、豊かなモデルの姿態を描き出しています。静かで、古典的な気品さえ漂わせています。1928年にパリで開かれたサロン・ドートンヌに出品し、帰国後1930年協会展という展覧会でも発表しています。
1920年代の半ば頃から、フランスに留学していた日本人作家たちが次々と帰国しています。徳島に生まれた伊原もそのひとりです。4年余りの留学を終え、1929年に帰国しています。彼らはエコール・ド・パリの自由な空気を吸収し、それぞれ個性的な表現をつくりだしました。彼らの帰国は、日本の画壇に清新な息吹を吹き込むことになりました。
留学中、伊原は熱心に西洋の古典絵画の研究に取り組んだといわれます。同時に、パリで評判となっていた新古典主義と呼ばれる時期のピカソの作品からも、深い影響を受けています。
この作品に見られる量感あふれる手足の表現や、古典的な雰囲気などは、まさしくピカソからの影響だといえるでしょう。
帰国当初、伊原はこういった裸婦像を次々と発表し、日本の画壇に数多くの追従者を生み出しました。またピカソに関する著書を著して、日本にピカソブームを巻き起こしています。
ピカソに傾倒していた時期の伊原の作風を代表するばかりでなく、昭和初頭の日本の洋画界の雰囲気を濃厚に伝える作品だといえるでしょう。
毎日新聞 (四国のびじゅつ館) 学芸員が選ぶ8
1995年7月29日
徳島県立近代美術館 江川佳秀
1995年7月29日
徳島県立近代美術館 江川佳秀