2019-03-15
実践事例 魔法の水絵の具
-大地(園庭)はキャンバス
岸上 学(おおぎ認定こども園)
「よ~し、絵を描こう!!」と思い立った時、私たちはどんな素材を思い浮かべるでしょうか??
一般的には、まず、「白い画用紙を用意して…」「マジック、マーカー、クレヨン、絵の具などを用意して…」と考えがちです。
もちろん、間違いではありません。しかし、ここで紹介したいのは、子どもたちの、自由で柔軟な「発想」であり、「視点」です。「雨(雨水)」を使って絵を描き、描くものを「園庭(大地)」にしたのです。
前日、クラスで手形スタンプ遊びをして、紅葉した葉っぱの壁面環境作りをしていました。この日(2018年10月24日) は、朝まで雨が降っていました。10時過ぎに園庭へ出てみましたが、水たまりがそこかしこにある状態でした。少しすると日も差し始め、ぽかぽかと暖かくなってきました。そして、一人の女児が水たまりを使って、手形スタンプができることを発見し、遊びはじめました。

「きっしー先生見て!!」
「昨日したよ」(手形スタンプ遊び)
(昨日は色がついていたが、水(雨水でもできることを発見)
「ハート」
「うわぁ、ホンマ、ハート(^-^)」
「こうしたら、四つ葉のクローバー」
(こう言いながら、手形を二つ増やしました)
「本当だ!クローバー!」
(周りにいた友だちも、昨日のスタンプ遊びを思い出し、一緒に遊びはじめました)
足形にチャレンジするも、どうもうまくいきません。歩いているうちに水分がなくなり、足形スタンプをしたい場所(空白地)まで雨水が持たないことに気が付き、ジャンプすると上手くいくことを発見しました。
「きっしーもやってみ!」「うん、やってみる!」「きっしーの足おっきい!」。足の大きさの違いに気付きました。すると、その姿を見ていた、他の子も遊び始めました。そんな時、隣でそっと見ていた一人の女児。指を筆に見立てて、自分の手形、足形に線を書き加え、「かたつむり」を描きました。「雨降ってたから、出てきたよ」(経験・発想)。
これを見ていたまた違う女児が思いついたように走り出したのです。保育教諭が、もしかしたら「筆を探しに行ったのかも」と後を追ってみると(バレないように…)、筆を手に振り向いた女児と目が合ってしまいました。「見つかってしまったΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)」と固まる女児。「いいよ」っと、「OK」を出すと、(ものすごく笑顔で…)走ってみんなの所に戻って行きました。
筆やブラシを受け取ったみんなは、思い思いに描き始めました。周りで見ていた友だちもその面白さにひかれ、次々に集まってきました。地面がキャンバスとなっていく瞬間でした。その素材の違いに気付き、色々な描き心地(キャンバス)を試してみる姿がありました。
テラスのギザギザタイル(滑り止め入り)?コンクリート(加工無しのそのまま)?園庭の地面(真砂土、砂)。そして、一人の女児が、コンクリートに描いたとき「かいてもかいてもすぐ消えるー!!」と、怒りはじめました。すると、この遊びを1番最初に始めた女児が、「〇○○ちゃん、これは “ みずえのぐ ” なの。かいてもすぐに消えちゃうこともあるの。不思議でしょう」。
「ふーん、そっか、 “ 魔法 ” みたい!」(納得する)
女児の怒り(不思議さやもどかしさ)は友だちの柔軟な発想で「発見」に変わりました。また、「大きなながいヘビをかきたい」という、Sくんの気持ちやイメージを共有共感し、一緒に遊び込んでいく姿が見られました。
「おおきいよ」「長いよ」「ほんとだ、長くておおきいなあ。」
Sくんがこんなにダイナミックに周りを気にせず、むしろ先頭に立ち、自ら遊んだのを初めて見ました。
「水絵の具」「不思議」「消える」「魔法」「納得」「大きく長いヘビ」「どこまで描けるのか」「共感共有」「やってみる」「子どもの気づき」「地面がキャンバス」などキーワードをたくさん発見する事が出来ました。
その次の日…。栽培用のじょうろを見つけて、何やら自分の周りに水をまき始める、Sくん。「お風呂だよ。(笑)」「もっと、お湯入れろ~」。

昨日、一緒に「ヘビ」を楽しんだ友だちが合流し、また遊びが始まりました。今日は、25M(メートル)クラスの長~いヘビが出来上がりました。
この日の夕方、再び、始まる「水絵の具」。朝の「ヘビ」は蒸発し、キレイに跡形もなく消えていました。午前中、製作遊びで「クリスマスの靴下」を作った体験を思い出しながら…その余った材料を持って来て飾り付け、大きな「靴下」を作り始めました。
「これで、たくさんプレゼントもらえる~。(笑)」っと。
すると、別の場所では、園庭に(キャンバス)大きな「家」を描きはじめました。(サンタさんが来てくれる~。(笑)」っと。更に、自分の自宅にあるであろう「家具」を描き足していき、お風呂、こたつ、テレビ、ソファー…など。
「車」
「できた~!!」
「よ~し、運転だ~!!」
「リビングとあらば…寝てみましょう」
「ああ~気持ちいい」(イメージを共有する。)
(普段は使わない、非常階段2Fから園庭を見てみる。)
「上から見たら、凄~い」
「初めて、ここから、お庭見た。面白い~」
それを見ていた友だちが、「なぁ、なぁ、俺たちも入れて~」「何か面白そう」と、参加し遊びが繋がり、広がっていきました。
このように、アートの視点というのは、先生(大人)が、導き、教えるのではなく、子どもたちの日々の生活のなか、遊びのなかにこそあり、それを先生(大人)が、感じ取り、共感し、認め、受け入れ、気づき、共に楽しむものなのではないでしょうか。
四角い白い紙の上、という先入観を一度忘れてみてはいかかでしょうか。
(きしがみ まなぶ)
「よ~し、絵を描こう!!」と思い立った時、私たちはどんな素材を思い浮かべるでしょうか??
一般的には、まず、「白い画用紙を用意して…」「マジック、マーカー、クレヨン、絵の具などを用意して…」と考えがちです。
もちろん、間違いではありません。しかし、ここで紹介したいのは、子どもたちの、自由で柔軟な「発想」であり、「視点」です。「雨(雨水)」を使って絵を描き、描くものを「園庭(大地)」にしたのです。
前日、クラスで手形スタンプ遊びをして、紅葉した葉っぱの壁面環境作りをしていました。この日(2018年10月24日) は、朝まで雨が降っていました。10時過ぎに園庭へ出てみましたが、水たまりがそこかしこにある状態でした。少しすると日も差し始め、ぽかぽかと暖かくなってきました。そして、一人の女児が水たまりを使って、手形スタンプができることを発見し、遊びはじめました。

「きっしー先生見て!!」
「昨日したよ」(手形スタンプ遊び)
(昨日は色がついていたが、水(雨水でもできることを発見)
「ハート」
「うわぁ、ホンマ、ハート(^-^)」
「こうしたら、四つ葉のクローバー」
(こう言いながら、手形を二つ増やしました)
「本当だ!クローバー!」
(周りにいた友だちも、昨日のスタンプ遊びを思い出し、一緒に遊びはじめました)
足形にチャレンジするも、どうもうまくいきません。歩いているうちに水分がなくなり、足形スタンプをしたい場所(空白地)まで雨水が持たないことに気が付き、ジャンプすると上手くいくことを発見しました。
「きっしーもやってみ!」「うん、やってみる!」「きっしーの足おっきい!」。足の大きさの違いに気付きました。すると、その姿を見ていた、他の子も遊び始めました。そんな時、隣でそっと見ていた一人の女児。指を筆に見立てて、自分の手形、足形に線を書き加え、「かたつむり」を描きました。「雨降ってたから、出てきたよ」(経験・発想)。
これを見ていたまた違う女児が思いついたように走り出したのです。保育教諭が、もしかしたら「筆を探しに行ったのかも」と後を追ってみると(バレないように…)、筆を手に振り向いた女児と目が合ってしまいました。「見つかってしまったΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)」と固まる女児。「いいよ」っと、「OK」を出すと、(ものすごく笑顔で…)走ってみんなの所に戻って行きました。
筆やブラシを受け取ったみんなは、思い思いに描き始めました。周りで見ていた友だちもその面白さにひかれ、次々に集まってきました。地面がキャンバスとなっていく瞬間でした。その素材の違いに気付き、色々な描き心地(キャンバス)を試してみる姿がありました。
テラスのギザギザタイル(滑り止め入り)?コンクリート(加工無しのそのまま)?園庭の地面(真砂土、砂)。そして、一人の女児が、コンクリートに描いたとき「かいてもかいてもすぐ消えるー!!」と、怒りはじめました。すると、この遊びを1番最初に始めた女児が、「〇○○ちゃん、これは “ みずえのぐ ” なの。かいてもすぐに消えちゃうこともあるの。不思議でしょう」。

「ふーん、そっか、 “ 魔法 ” みたい!」(納得する)
女児の怒り(不思議さやもどかしさ)は友だちの柔軟な発想で「発見」に変わりました。また、「大きなながいヘビをかきたい」という、Sくんの気持ちやイメージを共有共感し、一緒に遊び込んでいく姿が見られました。
「おおきいよ」「長いよ」「ほんとだ、長くておおきいなあ。」
Sくんがこんなにダイナミックに周りを気にせず、むしろ先頭に立ち、自ら遊んだのを初めて見ました。
「水絵の具」「不思議」「消える」「魔法」「納得」「大きく長いヘビ」「どこまで描けるのか」「共感共有」「やってみる」「子どもの気づき」「地面がキャンバス」などキーワードをたくさん発見する事が出来ました。
その次の日…。栽培用のじょうろを見つけて、何やら自分の周りに水をまき始める、Sくん。「お風呂だよ。(笑)」「もっと、お湯入れろ~」。

昨日、一緒に「ヘビ」を楽しんだ友だちが合流し、また遊びが始まりました。今日は、25M(メートル)クラスの長~いヘビが出来上がりました。
この日の夕方、再び、始まる「水絵の具」。朝の「ヘビ」は蒸発し、キレイに跡形もなく消えていました。午前中、製作遊びで「クリスマスの靴下」を作った体験を思い出しながら…その余った材料を持って来て飾り付け、大きな「靴下」を作り始めました。
「これで、たくさんプレゼントもらえる~。(笑)」っと。

すると、別の場所では、園庭に(キャンバス)大きな「家」を描きはじめました。(サンタさんが来てくれる~。(笑)」っと。更に、自分の自宅にあるであろう「家具」を描き足していき、お風呂、こたつ、テレビ、ソファー…など。
「車」
「できた~!!」
「よ~し、運転だ~!!」
「リビングとあらば…寝てみましょう」
「ああ~気持ちいい」(イメージを共有する。)
(普段は使わない、非常階段2Fから園庭を見てみる。)
「上から見たら、凄~い」
「初めて、ここから、お庭見た。面白い~」
それを見ていた友だちが、「なぁ、なぁ、俺たちも入れて~」「何か面白そう」と、参加し遊びが繋がり、広がっていきました。
このように、アートの視点というのは、先生(大人)が、導き、教えるのではなく、子どもたちの日々の生活のなか、遊びのなかにこそあり、それを先生(大人)が、感じ取り、共感し、認め、受け入れ、気づき、共に楽しむものなのではないでしょうか。
四角い白い紙の上、という先入観を一度忘れてみてはいかかでしょうか。
(きしがみ まなぶ)

イヴ・クラインの作品鑑賞〈空気の建築;ANT 119〉とボディプリント
イヴ・クラインの作品〈空気の建築;ANT 119〉(徳島県立近代美術館蔵)を題材にした鑑賞と造形活動が一体となったプログラム「ボディプリント」を紹介します。イヴ・クラインは、モデルの女性の体に青い絵の具を塗り紙の上に押しつけ、さらにその上からスプレーで絵の具を吹き付け、体の形を白く型抜きしてこの作品を制作しました。その表現方法を、手や顔、身近な道具をプリントした紙芝居で楽しみながら理解。そして、実際に体に描くボディペインティングで遊んだ後、紙に体を押し付けてプリントします。
先生たちにとっても、イヴ・クラインの作品を子どもたちと鑑賞し造形活動を楽しむことで、「絵は筆で描くもの」「アートは難しいもの」といったそれまでの型にはまった考え方が揺らぎ、美術について改めて考える機会になるのではないでしょうか。
○年齢: 3~5歳児
○活動場所: 屋外(汚れても良い状態にしたベランダや園庭など)
○時間: 4、5歳児は、鑑賞(紙芝居と掛図の鑑賞30分)と造形活動(ボディペインティングとボディプリント60分程度)
3歳児は、鑑賞と活動は分けて行うなど子どもの実態に合わせて無理のないように計画する。
○用意するもの: 鑑賞-紙芝居、イヴ・クラインの作品掛図
造形-ボディペインティング用の絵の具(手作りする場合はカセットコンロ、鍋、片栗粉、水、たらい、バケツ等)、子どもの全身が入るくらいの大きさの模造紙や障子紙など
イヴ・クライン〈空気の建築;ANT 119〉の掛図を使って「おしゃべり鑑賞」をして楽しみます。
身近な道具や体の一部に絵の具を塗って写し取ったり、型紙などを使ってスパッタリング*した紙芝居を見て、イメージを広げたりして作品の技法を理解します。
*金網とブラシなどを使って、霧状の絵の具を画面に定着させる技法。
自分の体に絵の具を塗って遊びます。手が汚れるのが苦手な子には、無理をせず、指先に絵の具を付けて紙にペタペタして遊びます。

筆で塗ると気持ちいいよ
絵の具でたっぷり遊んだ後は、自分の体の形を紙に写し取ります。紙の上に寝てぺたっとしたり、体の上に紙をのせてペタペタしたり写し方はいろいろいろです。
[ボディペインティング用絵の具の作り方]
① 鍋に水3リットル、片栗粉250ccを入れ沸かす。
② 木ベラで鍋底から混ぜながらとろみが付くのを待つ
③ とろみがついてきたら弱火にして絵の具を入れる。
④ 混ぜるとかきたま汁のようになるが、
ゆっくり丁寧に混ぜていくとだんだんなじんでくる。
⑤ できあがり
⑥ 大きなたらいに入れて一晩冷ます。
[ポイント・コツ]
◯鍋の中の絵の具は濃く見えるので、紙に塗って試しておくとよい。
◯前日準備を行っておくことで当日は子どもも保育者も思いっきり楽しめる。
◯片づけは5歳児と! たらいを洗ったり、
片栗粉の固まりを大事に拾ったりと楽しむ子もいますよ。
□発展として
クライン〈空気の建築;ANT 119〉は徳島県立近代美術館の所蔵作品ですが、展示替えがあるためいつも飾られているわけではありません。チャンスをみつけてぜひ本物の作品を鑑賞して欲しいと思います。

この作品を美術館に来て見つけると「これ、知ってる!」「前(掛図を見たとき)と違うものが見えてきた!」と作品の前で話が弾みます。絵の具の感触やにおいを思い出した子もいました。「どうして青色だけで絵を描いたの? 何か悲しいことがあったの?」と学芸員に質問した子もいました。作品を身近に感じ、作者へ思いを巡らせていたのでしょう。
先生たちにとっても、イヴ・クラインの作品を子どもたちと鑑賞し造形活動を楽しむことで、「絵は筆で描くもの」「アートは難しいもの」といったそれまでの型にはまった考え方が揺らぎ、美術について改めて考える機会になるのではないでしょうか。
○年齢: 3~5歳児
○活動場所: 屋外(汚れても良い状態にしたベランダや園庭など)
○時間: 4、5歳児は、鑑賞(紙芝居と掛図の鑑賞30分)と造形活動(ボディペインティングとボディプリント60分程度)
3歳児は、鑑賞と活動は分けて行うなど子どもの実態に合わせて無理のないように計画する。
○用意するもの: 鑑賞-紙芝居、イヴ・クラインの作品掛図
造形-ボディペインティング用の絵の具(手作りする場合はカセットコンロ、鍋、片栗粉、水、たらい、バケツ等)、子どもの全身が入るくらいの大きさの模造紙や障子紙など
作品鑑賞
イヴ・クライン〈空気の建築;ANT 119〉の掛図を使って「おしゃべり鑑賞」をして楽しみます。
紙芝居「空を飛んだ画家 イヴ・クライン」を見る
身近な道具や体の一部に絵の具を塗って写し取ったり、型紙などを使ってスパッタリング*した紙芝居を見て、イメージを広げたりして作品の技法を理解します。
*金網とブラシなどを使って、霧状の絵の具を画面に定着させる技法。

ボディ ペインティング
自分の体に絵の具を塗って遊びます。手が汚れるのが苦手な子には、無理をせず、指先に絵の具を付けて紙にペタペタして遊びます。

筆で塗ると気持ちいいよ
ボディ プリント
絵の具でたっぷり遊んだ後は、自分の体の形を紙に写し取ります。紙の上に寝てぺたっとしたり、体の上に紙をのせてペタペタしたり写し方はいろいろいろです。

[ボディペインティング用絵の具の作り方]
① 鍋に水3リットル、片栗粉250ccを入れ沸かす。
② 木ベラで鍋底から混ぜながらとろみが付くのを待つ
③ とろみがついてきたら弱火にして絵の具を入れる。
④ 混ぜるとかきたま汁のようになるが、
ゆっくり丁寧に混ぜていくとだんだんなじんでくる。
⑤ できあがり
⑥ 大きなたらいに入れて一晩冷ます。
[ポイント・コツ]
◯鍋の中の絵の具は濃く見えるので、紙に塗って試しておくとよい。
◯前日準備を行っておくことで当日は子どもも保育者も思いっきり楽しめる。
◯片づけは5歳児と! たらいを洗ったり、
片栗粉の固まりを大事に拾ったりと楽しむ子もいますよ。
□発展として
美術館での作品鑑賞
クライン〈空気の建築;ANT 119〉は徳島県立近代美術館の所蔵作品ですが、展示替えがあるためいつも飾られているわけではありません。チャンスをみつけてぜひ本物の作品を鑑賞して欲しいと思います。

展示室での子どもたちのようす
この作品を美術館に来て見つけると「これ、知ってる!」「前(掛図を見たとき)と違うものが見えてきた!」と作品の前で話が弾みます。絵の具の感触やにおいを思い出した子もいました。「どうして青色だけで絵を描いたの? 何か悲しいことがあったの?」と学芸員に質問した子もいました。作品を身近に感じ、作者へ思いを巡らせていたのでしょう。




