徳島県立近代美術館は、1990年の開館以来、学校教育との連携事業に力を入れてきました。小・中・高校の教員や大学の研究者と連携して教材開発を行い、各学年に応じたプログラムで、展覧会案内や出前授業に取り組んでいます。2012年からは本格的に保育所との連携がスタートしました。この活動は「アートの日」と呼ばれ、その日は当館職員が保育所に行ったり、子供たちが美術館に来たりして、「楽しい」、「私にもできる」、「子どもが成長しているのが実感できる」活動を展開しています。
これからも県内の就学前施設と美術館のネットワークをひろげ、より多くの子どもたちにアートの楽しさを届けていきたいと思います。
「アートの日」の取り組みの特徴は、可能な限り年度初めに年間計画をつくり、季節ごとのあそびや行事と結びついた活動にすることで生活の中に自然な形でアートが浸透していくように工夫していることです。そして、「アートの日」は年長クラスだけでなく2歳、3歳のクラスでもアート活動に取り組みます。いろいろな作品を見たり、いろいろな素材に触ったり、いっぱいお話したりしています。これまで保育所の先生たちと一緒に実践してきたプログラムの中から、おすすめのものをレシピとしてご紹介します。
鑑賞というと子どもには難しいと思われるかもしれませんが、子供たちの興味・関心に合った鑑賞活動、たとえば作品から自分の好きな色や形を見つけていくこと、描かれている鳥や猿などの動物を数えることなど、楽しい活動はいろいろあります。そして、子どもたちはそれぞれに作品の世界に入り込み、画面には描かれていない多くのことを感じ取ったり、想像したりしているのです。
お気に入りの作品を選び、よかったところや見つけたものを発表し合います。「髪の毛がハートの形に見える!」「手に何か持ってる!」言葉でうまく話せなくても指差しや作品の「まねっこ」をするだけで、みんなに伝わります。同じ作品を選んでも指差すところが違っていたりして、みんな「いいね」って思います。
美術館と就学前施設が連携することで、鑑賞と造形が一体となったユニークな活動が生まれています。子どもも保育者も、美術館のさまざまな作品から刺激を受け、「上手な」「きれいな」だけではない作品の良さを感じ取れるようになるでしょう。そして、ある時はダイナミックに全身を使って表現し、ある時は細い筆先に全感覚を集中させて、多彩なアートの世界を体験することができるでしょう。
みんなでイヴ・クラインの作品を鑑賞します。クラインが、自分の一番大事に思う一つの色だけを使ったことや、空を飛びたかったことなども話します。自分なりに想像をはたらのかせて十分に鑑賞した後に、実際に自分の身体に絵の具を塗って紙に写す「ボディプリント」をしてみます。
造形というと粘土で動物をつくったり画用紙に絵を描いたりすることを思い浮かべる人が多いと思います。けれども、子どもたちの興味・関心は、それだけに留まりません。生活や遊びの中で不思議なことや面白いことをたくさん発見し、想像力をふくらませ、様々に表現しています。ここでは、子供たちの身近にある素材や遊びと結びついた造形活動をご紹介します。
いつものシャボン玉遊びとお絵かきが一体となることで、楽しく活動できるプログラムです。絵具にシャボン玉の残り液や食器用洗剤を少し入れることで透明ビニールなどに描くことができ屋外で手軽にお絵かきができます。シャボン玉をよく観察してみるといろいろな発見があり子供たちが表現する世界も広がります。
「アートの日」の活動に興味がある先生や、ぜひ「アートの日」を取り入れたいとお考えの先生と一緒に、保育の中でアートをいっぱい楽しむプログラムを考える勉強会を開催しています。参加者のみなさんと学び合いながら鑑賞力や造形活動での実践力を高めていきませんか。美術は苦手と思っている先生も大歓迎です。お気軽にご参加ください。勉強会・研修会のスケジュール
「お約束ソング」(徳島市立城西保育所5歳児)と「近代美術館のうた」(鳴門市中央保育所の3、4、5歳児)は、美術館見学の後に子供たちが鼻歌のように口ずさんでいたメロディーと歌詞を先生が記録し楽譜にしてくれたものです。
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