審査員を務めさせていただいた、徳島新聞の佐藤です。
まずは受賞された皆様、本当におめでとうございます。そして、出演していただいた全出席者の皆さま、素敵なパフォーマンスを本当にありがとうございました。
大雪のために来られなかった2014年を除き、審査を担当させてもらうのは3回目です。毎年楽しみにしています。この徳島で、この場所で、挑戦や情熱溢れるパフォーマンスが繰り広げられているということを、とても嬉しく思っています。加藤さんが「異種格闘技戦」と例えていましたけれど、いい意味でごちゃごちゃしたさまざまなジャンルがある、この感じがとても好きなんです。
その中で、私自身の経験や好みを含めて、出演者の皆さまに、一言ずつ添えさせていただきます。
まず、吹奏楽部でジャズをやっていた経験があるので、「たけと愉快な仲間たち」さんから。今回はゴスペルに挑戦。まず選曲が、いい意味でズルイ(笑)「天使にラブ・ソングを」が来たら、知っている人にすればテンションが上がるじゃないですか。男性ボーカルも女性ボーカルも良い。緩急もあったし、ビブラートも効いていて、その一方で演奏もすごく良い。特に心惹かれたのがトランペットの高音です。「ああ、めっちゃかっこいい」と思いました。それに加えて皆さんのコーディネートにも着目しました。映画をご覧になった方はご存じかと思いますが、「天使にラブ・ソングを」は教会というか、修道院が舞台。出演者の服装が、白襟付きの黒い服だったり、聖職者をイメージした十字架のロザリオをつけていたりといった、細かいこだわりが素敵だと思いました。ゴスペルという新しい分野に挑戦した分、歌に一生懸命になっていた感があった気もします。歌に人数を割いた分、演奏にも音圧・迫力がもう少し欲しかったかな、というところではありますが、音に負けない声量や、楽器を揺らしてもぶれない音の安定感はさすがでした。
チャレンジ芸術祭での新ジャンル、デジタル音楽と光と演出の融合に挑戦された「plant145」さん。床をスクリーンに使っていたのですが、会場の床は白くて明るいので、やや見づらい。客席前に審査員がいて前方の人しか見られなかったので、ぜひ今度は天井や壁面、ガラス窓を使ってほしい。今後も進化してもらえたら嬉しいです。
圧巻の実力を見せてくださった「内藤一典」さん。私は今回初めて拝見しました。2014年に審査員特別賞を受賞された際、私は大雪取材のため審査に当たれず、大変申し訳ございませんでした。空手をたしなんでいた自分からすると、敵対する相手から目を逸らさない、想定する敵がそこに見えているという姿勢がとても印象的でした。目線の力強さ、足腰や回転の安定性、足先指先にまで行き届いた神経、美しい摺り足など、細部に熟練や完成度の高さを感じました。扇を使ってお酒を飲み干す仕草なんか、赤ら顔の武将が見えた気さえしましたね。
個人的にお伝えしたいのは「メルト」さんです。審査員長からの講評にもありましたが、大道芸のニュージャンルというか、アニメ曲との組み合わせということで。私個人としては1曲目に(「遊戯王」の曲)「神の怒り」が流れた時点で、もうやられてしまって。紹介文には「アニメなどの曲との融合」とあったので、もう少し曲と動きを連動させると、さらに一歩進化するのではないかと。最後の曲は4分ほどありましたが、けん玉だけでこんなにたくさんの動きができて、4分が短く感じられるのはすごい。けん玉をジャグリングのコマのように高く飛ばすのは、今回の出演者の中で一番、天井の高さを活かしていたのではないでしょうか。それからこういう言い方は失礼になってしまうかもしれませんが、メンタルの強さが素晴らしいなとも思いました。何回か落とす場面もありましたが、何食わぬ顔でリカバリーしていた。何より「自分の持ち味を最大限活かしたい」という思いを、この芸術祭の場所で宣言できる強さにも、本当に心惹かれました。
毎回、本当にいろいろなジャンルの方が登場して、自分たちにとっての「挑戦」をしている皆さんの姿がすごくまぶしい。今回感じたのは、今までの自分にそうしたチャレンジ部分を加え、新しいものを生み出していく葛藤や苦労という点です。何度も出場している皆さんが、全力出し切っている、さらにその上に「前回以上」という目標を自分たちに課している。もっともっと上を目指す、壁を超える、壁に穴をぶち開ける、別の道を探してみる、そういう姿勢がとてもよく見えました。チャレンジ中だからこその迷いや悩み、失敗もあるのでは。手応えを感じにくかった人もいるかもしれませんが、そうした生みの苦しみも心動かされた要因の一つです。 グランプリの「ときめきダンスカンパニー四国」さんは、「どうすれば自分たちの思いを伝えられるか」という、悩みや思い、迷い、日頃の苦労を積み重ねた上での受賞だったと思います。
初出場の方は緊張や不安で「思うようにできなかった」と感じたかも知れませんし、「こんな自分で、こんなパフォーマンスでいいのかな」と思ったかもしれませんが、いいんです。それでいいんです!全力でぶつかってきてください!というのを、あらためてお伝えします。 全体を通してお伝えしたいのもそこです。自分の体でも、楽器でも、小道具でも、床でも天井でも何でも構わない。使えるものを何でも使って、全部駆使して、全力を出し切って見せてもらえるもの。それは審査員冥利に尽きます。何ならそこに座っている審査員を小道具に使っていただけるような…(笑)もちろん規定にひっかからない範囲で、ではありますが。
見ている人、聞いている人、感じている人が五感と全身で感じられる、情熱の全力をお待ちしております。技術や完成度、構成、バランスなどを底上げすることでもありますし、同時に分野や枠、これまでの自分を超えてやるという思いにも表れてきます。全てが芸術になり、全てがエンターテインメントになる可能性がある。伝えたいこと、自分が表現したいことを表す苦しみや喜びは、必ず人の心を動かすものです。だから来年、記念すべき第10回に、魂揺さるパフォーマンスお待ちしております!









