割石 容

Yasushi Wariishi

展示部門審査委員長

徳島県立近代美術館長


  


展示部門の審査委員長として、講評を申し上げます。
展示部門では、抽選によって選ばれた42組の方々から、絵画・彫刻・工芸など様々なジャンルの芸術作品をご出品いただきました。
最終の審査は、昨日の午前中に行いましたが、第10回目を飾るに相応しい、本当に、力作揃いであったと思います。
受賞理由について、順次、申し上げます。

グランプリの「尾田稔子」さんは、日々の日常性の痕跡が集積し、それが作品の質につながっており、人生の節目を乗り越えた重みを感じました。

準グランプリの「消っしーほりえ」さんは、古い建具の利用や、インクの質感がレトロな日本の趣を感じさせました。キッチュな印象のある消しゴム版画が日常生活に入り込むことで、新しい展開を予感させるものでした。

チャレンジ奨励賞の「亀井俊治」さんは、人間と現代医療の関係性や作家が過ごした時間が、端的に質量として表現されており、生きることを問い直しているものでした。

同じく、チャレンジ奨励賞の「早渕太亮」さんは、トタン屋根の廃材が発する物質のメッセージと人間の魂や精神性が作品の中で融合し、作家の意図がうまく表現されていました。

同じく、チャレンジ奨励賞の「エイトマン」さんは、映像表現の面白さを引き出し、大きく展示することで、ダイナミックで楽しい作品となっていました。

MIP賞の「きたやまあい」さんは、人生を締めくくるための容器を魅力的なものとして提示し、生や死を問いかける強い印象を与えていました。

受賞理由については以上でございます。 受賞された皆様方は、本当におめでとうございます。 また、賞を逃された方々も、とても素晴らしい作品で、芸術の素晴らしさを改めて教えていただきました。これからの創作活動に期待いたしております。 以上簡単ではございますが、私からの講評とさせていただきます。 ありがとうございました。