島尾 竜介
徳島県立近代美術館 館長
展示部門の講評を申し上げます。
yoyoru(グランプリ)
一点ごとの作品の密度が高く、100点の作品を一堂に展示したチャレンジ精神と仕事量に圧倒された。作品数は多いが全体的なまとまりがあり、絵本のような物語性を感じさせる。見ていて楽しく、その世界に引き込まれた。見る人に作品タイトルを考えさせるなど、観覧者と共に作り上げようとする工夫も光る。これからの展開を大いに期待したい。
山田百合愛(準グランプリ)
擬人化された動物たちという舞台設定が面白く、一見楽しそうに見えるが、そこに社会的なメッセージ性が込められている。作品のクオリティも高く、夜空を見上げるように、高めの位置に展示した点にも工夫が見られる。自分が表現したい世界を描き切ろうという意気込みが伝わってきた。さらなる成長を目指して、制作を継続していくことを期待したい。
笠原あろは(チャレンジ奨励賞)
中学生の自分自身とカラスを重ね、作品をつくることで自分をみつめている。模索しながら、造形を通じて生き物の生命観をしっかり表現しようとしていることが伝わってくる。また、テーブルの色の反射がカラスの羽の色にも効果を与えている。自分の描き方を大切にして、自分に見えている世界を、作品を通じてこれからももっと見せてもらいたい。
SHOTA ISAWA(チャレンジ奨励賞)
白と黒のコントラストが深刻な社会問題を明確に表現しており、ハートに向かう赤い糸は、その問題の方向性を示している。赤い糸の張り具合は、社会問題をめぐる緊張感を思わせ、壁面を広く使った展示構成も印象的である。シンプルな構成でメッセージがよく伝わってくる。これからも表現の幅をさらに拡げていくことを期待したい。
ぴらぴた(チャレンジ奨励賞)
壁面に展示した漫画であるが、見る者にしっかりと読ませる力があり、悩みが伝わってきた。ペンギンのキャラクターも魅力的で、作者の人間性を感じさせる。作品名の「うつむいて歩こう」に救われる人や、共感し勇気や希望をもらう人もいるだろう。チャレンジすることだけがいいのではなく、自分を肯定し、自分らしくいることの大切さを教えてくれた。
ひkaル(MIP賞)
触れてはいけない内面の生々しく直接的な感情に触れてしまったようなインパクトと魅力を感じる。技法にもモチーフにも、既製の枠を感じさせない独学の良さがある。表現したいことを自分で探し、自分のフィルターを通して描いた世界は魅力的である。迷いながらもチャレンジを楽しんでいるように感じられる。今後もぜひ描き続けてもらいたい。