》 フランス近代絵画をめぐる旅 1 《

セーヌ川、ブルターニュ、そして南仏

 フランスの地図を広げてセーヌ川沿いに眼を走らせてみましょう。まず、フランス王家の離宮があるフォンテーヌブロー。ルノワール、シスレー、モネ、ピサロなど、後に印象派の巨匠となる若き画家たちが制作に訪れた森です。

カミーユ・ピサロ
<羊飼いの女>
1887年頃

 パリに入ると、右岸には若きピカソやローランサン、キスリング、ユトリロらが集まったモンマルトルの丘が、左岸には、シャガールやモディリアーニ、レオナール・フジタ(藤田嗣治)らが活躍したモンパルナスが位置します。そしてセーヌ川はパリを貫き、印象派モネが晩年を過ごしたジヴェルニー、大聖堂で知られるルーアンを過ぎて、やがて、モネが幼年時代を過ごし、またデュフィが生まれたル・アーヴルのある河口近くへと続くのです。

 さて、セーヌ川を離れて目を西に転じると、ゴーギャンを慕って青年画家たちが集まった、ブルターニュ地方のポンタヴァン、さらに南には、ルノワールが晩年を過ごしたカーニュ、点描で知られるシニャックが別荘を構えたサン・トロペ、ピカソがバカンスを楽しんだアンティーブやカンヌ・・・。

クロード・モネ
<サン・タドレスの断崖>
1867年

 「フランス近代絵画展」の出品画家たちにゆかりのある土地を駆け足でたどってみました。求心力のある町があり、そこに人々は集まり、新しいつながりが生まれる。そして各地へと拡がりながら、それぞれの土地の伝統や風土、地域性と絡み合って新たな展開を見せて行く。長らく文化や芸術の中心地であり続けるフランスの懐の深さを垣間見る思いです。

近代美術

エドモン・クロッス
<遊ぶ母と子>
1897-98年

 これらの画家たちが活躍した時代は「近代美術」と呼ばれます。「近代」がいつから始まるか、という問題は奥が深く、一言でまとめきれるものでありませんが、ヨーロッパ美術の「近代」を語る時には、19世紀初頭から説き起こし、同世紀半ばの印象派の登場により本格化したと解釈されるのが通例といえるでしょう。

 印象派が生まれたのは今から150年近く前、日本では明治維新の動乱期にあたります。以後、20世紀の前半にわたる西洋「近代美術」の動きは、美術界に大きな変革をもたらし、21世紀の今もなお、その影響は続いています。では、それはどのような新しさをもたらしたのでしょうか。


※図版の作品は、すべて松岡美術館所蔵です。
※画像の無断コピーは、法律で禁じられています。

次へ >>


目次
》 フランス近代絵画をめぐる旅 《
1  セーヌ川、ブルターニュ、そして南仏
 近代美術
2  印象派
 ポンタヴァン派・ナビ派
 点描派
3  フォーヴィスム
 キュビスム
 エコール・ド・パリ
4  松岡美術館のコレクション、その楽しみ方

フランス近代絵画展トップページ


美術館TOP よみもの

Copyright:徳島県立近代美術館.2003