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印象派
モネの<エトルタの波の印象>(1885年)は、セーヌ川河口のル・アーヴルの北に位置するエトルタの海岸を描いています。モネが好んで何度も描いた断崖の風景です。一見してぼんやりと輪郭がはっきりしていません。ここでのポイントは色であり空気感です。風景は刻一刻と変化します。それを、そのまますばやく捉えようとした結果なのです。 しかし、私達が現実に眼にしているのは、理想化された姿ではありません。そこで印象派の画家たちは、そんな規準には従わず、見えるがままの光や揺れ動く自然の姿を描こうとしたのです。ルノワールや、ピサロ、シスレーなどの作品の、水や植物、人間の肌の色は、緑、青、赤などがあまり混色されずに塗られています。混ぜることによる色の濁りをさけ、明るさを獲得しました。また、すばやく豊かな筆触も特徴となっています。 ゴーギャンに影響を受けた若手作家の集まりです。印象派同様に色彩を重視しましたが、その特徴は、色の点や筆触ではなく、色の面で構成することにあります。
出品作品には印象派との区別がつきにくい作品も少なくありませんが、たとえばドニの<赤いベッドに横たわる裸婦>(1898年)は、赤い色面が画面全体を圧倒的に支配しています。それは装飾的であると同時に、赤に込められた象徴的な意味を示唆するかのようです。実際には、これほど真っ赤な寝室は考えにくく、まずありえない光景なのかも知れません。しかし、それは画家の心の中には確かに存在する現実なのです。 また、ヴュイヤールの<フレシネ夫人>は、奥行きの少ない平面的な面の配置によって画面が構成されており、背景の水墨画のような鳥のモチーフとともに、日本の影響(ジャポニスム)を思わせます。西洋にない空間構成が取り入れられています。
シニャックらがおこなった点描とは、印象派が色を混ぜずに描いた方法を徹底し、捕色関係などの科学的な色彩理論を応用しながら、色をそのまま画面に置いていく方法です。光を分光すると、光の色は波長の順に分かれてならびます。キャンバスに置かれた色の点は、いわばこの光のスペクトルのようなものです。そして色の点を光の場合と同様に、人間の眼の網膜の上で混ぜ合わせようという、それは画期的な方法論でした。そこでは絵の具の色の明るさは減じることがありません。この考え方は、現在ではカラー印刷の原理にもつながっています。 シニャックの<サン・トロペの港>(1923年)に見られる色の点の形は、やや大ぶりの長方形で、全体に力強さと明快さが感じられます。 | ||||||
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| 目次 | |
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| 1 | セーヌ川、ブルターニュ、そして南仏 | 近代美術 |
| 2 | 印象派 |
| ポンタヴァン派・ナビ派 | |
| 点描派 | |
| 3 | フォーヴィスム |
| キュビスム | |
| エコール・ド・パリ | |
| 4 | 松岡美術館のコレクション、その楽しみ方 |