美術館の展示室の中で、ガラス張りのケースの中に展示されている作品は、他の作品に比べて高価なのですか?

 美術館で収蔵している作品はすべて、購入時の価格によらず、それぞれに大切な文化財です。作品によって扱いに差をつけることはありません。よって、高価な作品だからガラスケースの中に展示しているというわけではないのです。

 もう、皆さんもよくご存じのことだとは思いますが、作品は展示室の中といえども、展示に際して、常にさまざまな危険にさらされています。ですから、まずは、作品を保存する上で、展示室の環境の中に、ガラスケース内という環境を作り、作品をできるだけ傷めないように配慮しているわけです。作品の中には、日本画、水彩画、版画などに保存の難しいものが多く、それらの作品は、塵埃や温湿度の急激な変化を避けるために、ガラスの入った額縁やガラスケースの中に展示されることがほとんどです。このような作品は、光の害からも守られるように、照度を落とした状態で展示されていることは言うまでもありません。

 また、展示される空間の中で、作品の大きさがあまりに違いすぎて、作品を観るときのリズムづくりが難しい場合があります。そんな場合、極端に小さな作品などは、大きな壁に大きな作品と並んで展示されるのではなく、移動式のガラスケースの中などで、鑑賞者と親密な空間を作ることができるように展示上の工夫がなされる場合もあります。

 いずれにせよ、本当ならば、作品はガラスを隔ててというのではなく、実際の画面を、何も間に介さないで観られることが望ましいわけですが、長い目で、作品を守り、後世に伝えてゆくためには大切なことだと、了解していただきたいと思います。


徳島県立近代美術館ニュース No.38 Jul.2001
2001年6月
徳島県立近代美術館 吉原美惠子