[美術館のいろいろなスペース] 屋外展示スペース

 これまで紹介してきた空間は、すべて屋内にありましたが、最後に屋外にある美術館のスペースを紹介することにしましょう。文化の森の三館棟の裏は小さな山になっていますが、この裏山に彫刻の小径という散策道が敷かれています。来園された方はどなたでも、この裏山に登ってゆく小径の傍らに設置されている彫刻を自由に鑑賞することができます。

 彫刻の小径の入り口には、速水史朗の黒御影の作品「四国三郎」があります。悠々と流れる大河のイメージをたたえた、ゆったりとおおらかな印象を持つ作品です。途中には石を組み合わせた道北英治の「かけらたち(大地のなかま)」、木陰にはベンガラを施した山口牧生の「四角い形D」と、木立の中に作品が置かれてあります。この辺りの作品は、何度も美術館を訪れて下さっていても、まだ見たことがなかったとおっしゃる方がおられるかもしれませんが、石の持ち味を活かした魅力的な作品です。ぜひ、小径を歩きながら、作品とふれあっていただきたいものです。

 そして最後に、力スケードの方へと導かれていくと、やや小高いところから田中昇の「森の風」がユーモラスな様子で私たちを明るく出迎えてくれます。これらの作品は、自然の時の移り変わりの中で、美術館の展示室や屋外展示スペースとはまた、ひと味違った表情を見せていることに気づかれることでしょう。


徳島県立近代美術館ニュース No.32 Jan.2000
1999年12月
徳島県立近代美術館