[暮らしの中に] モード

 1920年代に、パリを舞台に活躍した一群の芸術家たちを総称して「エコール・ド・パリ(パリ派)」と呼びますが、彼らはまさしくパリに集まったよそ者たちの集団でした。彼らは互いに刺激を与えあいながら、それぞれの表現を見いだし、やがて彼らの舞台であるパリは世界中から芸術の都として注目されるようになります。例えば舞台芸術において、彫刻家が舞台装置を、画家が緞帳を制作し、詩人が台本を任され、服飾デザイナーが舞台衣装をデザインするなどし、演出家は新しい振り付けを行いました。

 なかでも、最も人々に身近だったのはモードです。身につけるものは、日常的に自分を表現できる良い手段でした。そして科学技術の発達や、それに伴う人々の生活様式、意識の変化などにより、20世紀はモードの面で大きな変化が認められます。衣服のデザインや流行色、材質などは時代を反映しています。当時のモードから、社会の様子や美しさの条件の移り変わりを探ることもできます。そんな目で、現代の衣生活を考えてみると、モードを生み出すデザイナーの社会的な役割にも気付くかもしれません。それがじつは、美術にも同じように言えることなのですが。


徳島県立近代美術館ニュース No.19 Oct.1996
1996年9月
徳島県立近代美術館