[美術館の外に協力者を求めて] 教育担当からのレポート 2009

 平成21年度の美術館教育事業について報告します。唐突ですが、みなさんは美術館の展示室で「腹を抱えて笑いころげた」ことがありますか? 8月の「おもろいやつら」展では、担当吉川学芸員が漫才師のおかけんたさんにトークショーを依頼しました。知る人ぞ知る現代アートのコレクターでもある、おかさんのライブは笑いあり辛口スパイスもありの格好よさ。アーティストへの敬愛と好奇心いっぱいの語り口から、とにかく元気をもらいました。アートへの大きな愛に、作品も私たちも包まれたひと時でした。この展覧会ではさらに4人の作家をおまねきし、自作を語っていただきました。ご自分の歩んできた同時代の実感を込めたアートシーンの回顧は生々しく、大変勉強になりました。

 さて、再びみなさんにおたずねします。美術館で、「手をあわせてお祈りをした」ことがありますか? これは仏像などの鑑賞の場ではよくある光景かも知れませんね。9月の「「谷口董美・山下菊二兄弟」展では、「阿波木偶廻しを復活する会」の皆さんによる、「三番叟まわし 箱廻し」が絵を前に上演されました。会の代表の辻本一英さんと、二人の作家が描いた木偶の絵との出会いから生まれた幸運な企画です。演じ手は作品に祈りを捧げ、鑑賞する私たちもまた人形に宿った神にこうべをたれるという、当館としては初めての経験でした。ここでも、美術館という場をより大きなスケールで包み込む何かが、感じられたように思います。

 また今年度は、「文化庁地域文化芸術振興プラン」の事業を通して、いつにもまして館外の方々の助けを借りて活動してきた一年でした。11月のワークショップ「ピカソdeはなそ!」の講師は、コピーライターの新居篤志さん。ピカソの絵に、「うちの叔母さんの化粧と似とるで」とのつぶやきには、目からウロコが落ちる思いでした。もっともっと「アートで話そ」を広げていきたいものです。

 様々な方の、美術館との個性的な関わり方が魅力の「美術を楽しむ・わたくし流」も3年目。10月の音楽療法士の板東浩さん、ホルンの錦織悠さん、児童文学の竹内紘子さんによるコンサートは展示室に歌声こだまする大盛況でした。3月に予定の河南堂珍元斎さんによる美術講談も、当館としては新たな挑戦となります。

 定番の展示解説も人気です。ぜひ一度のぞいてみてください。こども鑑賞クラブも「6年生になりました」を合言葉に、高学年プログラムを充実させてきました。参加してくれる子らの元気をバネに、さらに盛り上げていきたいと思います。


徳島県立近代美術館ニュース No.73 Apr.2010
2010年4月
徳島県立近代美術館 竹内利夫