
帰国後の晃甫は、画廊や百貨店主催の展覧会を含め、多くの展覧会に出品し、活発な発表を行います。ただし、大正期に認められた個性表現や、ヨーロッパで可能性を感じた新しい表現は追及できず、戦争に向かう時代状況のなかで、「日本」的な花鳥画を中心にした温和な画風の作品を描いていきます。
実はこの頃の晃甫は、表向きは旺盛に活動したように見えながらも内部に沈潜し、時代に背を向けるようになっていました。画商との応対や美術界との関わりのほとんどを妻にまかせ、アトリエに閉じこもる日々が続きます。神秘主義に惹かれていた晃甫は、一人物思いにふけることも少なくなかったと言います。






