近代美術館のロビーからガラス越しに見えるフェルナンド・ボテロの〈アダムとイヴ〉の人物像は、ブロンズで鋳造されたものです。遠目に見ても、表面がよく光っています。
この作品は、近代美術館が開館した平成2年から、ずっとこの場所で風雨にさらされてきました。現在でもこのように表面がつややかなのは、毎年、手入れをしているからです。高圧の温水による洗浄で、汚れや錆の元となる付着物などを落とし、さらに、表面を保護するためのワックスをかけています。
ところで、錆に、良い錆と悪い錆とがあることをご存知でしょうか。ブロンズの場合、表面が良い錆で覆われると、その錆が鎧のようにその内側を保護するようになります。この性質を利用して、プロンズ鋳造の最後の工程で、表面に錆の膜を人工的につけて仕上げをします。ブロンズ彫刻が、青緑色や黒い色をしているのはそのためです。
しかし、この人工的な膜は、それほど強くはありません。街中の銅像などでは、頭から足に向かって、雨垂れの流れたところが新たに錆びて、その痕が見苦しくなっているものもあります。重症になると、流れた跡が溝のように削れたり、穴があいたリすることもあります。
一般的には、仕上げられたブロンズの表面をさらに保護するため、その上にワックスをかけて、保護膜を作ります。このワックスにも種類があります。どの種類を選ぶかは、その彫刻が置かれる環境と作品の見た目のバランスによります。
硬いワックスは、保護する力は強いのですが、表面がいかにもワックスで固めましたという感じになりがちで、彫刻の表面に作られた表情を見にくくする場合もあリます。しかし、交通量の多い道端のように、置かれる環境が悪ければ、この種類が必要です。
軟らかめの場合、彫刻の表情はわかリやすいのですが、耐久性が弱めなので、まめな手入れが必要となります。
近代美術館は、緑に囲まれた良い環境の中にあり、定期的に手入れを行うことにしているので、鑑賞にやさしい、軟らかめのワックスを使っています。
徳島県立近代美術館ニュース No.54 July 2005
2005年6月
徳島県立近代美術館 安達一樹
この作品は、近代美術館が開館した平成2年から、ずっとこの場所で風雨にさらされてきました。現在でもこのように表面がつややかなのは、毎年、手入れをしているからです。高圧の温水による洗浄で、汚れや錆の元となる付着物などを落とし、さらに、表面を保護するためのワックスをかけています。
ところで、錆に、良い錆と悪い錆とがあることをご存知でしょうか。ブロンズの場合、表面が良い錆で覆われると、その錆が鎧のようにその内側を保護するようになります。この性質を利用して、プロンズ鋳造の最後の工程で、表面に錆の膜を人工的につけて仕上げをします。ブロンズ彫刻が、青緑色や黒い色をしているのはそのためです。
しかし、この人工的な膜は、それほど強くはありません。街中の銅像などでは、頭から足に向かって、雨垂れの流れたところが新たに錆びて、その痕が見苦しくなっているものもあります。重症になると、流れた跡が溝のように削れたり、穴があいたリすることもあります。
一般的には、仕上げられたブロンズの表面をさらに保護するため、その上にワックスをかけて、保護膜を作ります。このワックスにも種類があります。どの種類を選ぶかは、その彫刻が置かれる環境と作品の見た目のバランスによります。
硬いワックスは、保護する力は強いのですが、表面がいかにもワックスで固めましたという感じになりがちで、彫刻の表面に作られた表情を見にくくする場合もあリます。しかし、交通量の多い道端のように、置かれる環境が悪ければ、この種類が必要です。
軟らかめの場合、彫刻の表情はわかリやすいのですが、耐久性が弱めなので、まめな手入れが必要となります。
近代美術館は、緑に囲まれた良い環境の中にあり、定期的に手入れを行うことにしているので、鑑賞にやさしい、軟らかめのワックスを使っています。
徳島県立近代美術館ニュース No.54 July 2005
2005年6月
徳島県立近代美術館 安達一樹