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マン・レイ展
「わたしは謎だ。」
2005年1月15日(土)-3月21日(月)

 
   

マン・レイ展の出品作品から次の5点をとりあげてご紹介します。

〈前と後〉
〈イジドール・デュカスの謎〉
〈マックス・エルンスト ソラリゼーション〉
〈パン・パン(彩色パン)〉
〈恋人たち+裸体とチェスセット マン・レイのアトリエ パリ〉

   
   

マン・レイ展のご紹介はこちらです。

   

〈イジドール・デュカスの謎〉
 1920/1971年 布に包まれたオブジェ 45.0×58.0×23.0

 布に包まれ紐で縛られた物体。この中には何が入っているのでしょうか。そのヒントは作品のタイトルにあります。
 イジドール・デュカスとは、「ロートレアモン伯爵」と名乗っていた南米ウルグアイ生まれの19世紀フランスの詩人です。奇妙で変幻自在な言葉で書かれた長編叙事詩『マルドロールの歌』など、わずかな作品を残して無名のまま夭折しました。この詩人に注目したのが、マン・レイをはじめとする前衛的な芸術運動シュルレアリスムの仲間です。たとえば『マルドロールの歌』の一節「解剖台の上の、ミシンと雨傘の偶然の出会いのように美しい」は、その思いがけない言葉の結びつきが生み出す不思議さ、驚き、面白さで、彼らを魅了します。
 さて、布の中身はおわかりでしょうか。ミシンと雨傘? 残念。中身はミシンのみで雨傘は入っていません。マン・レイはこの詩の一節を念頭にこの作品を作りましたが、雨傘は入れませんでした。なぜでしょう。マン・レイは仕立て屋の息子だったのです。ミシンと布。「なるほど」と思いませんか。
 ミシンは包まれるとミシンとしての実用性や機能を失います。それは役に立たない、ただの「もの・物体」になってしまう。でも、そこには不思議が生じます。こんな作品をオブジェと呼びます。
 この作品のモチーフを、マン・レイは生涯を通じて版画や写真などの様々な形で、繰り返し作品化しています。紐のないものもあります。ぜひ展覧会場で発見してください。

(主任学芸員 友井伸一)

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