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マン・レイ展
「わたしは謎だ。」
2005年1月15日(土)-3月21日(月)

 
   

マン・レイ展の出品作品から次の5点をとりあげてご紹介します。

〈前と後〉
〈イジドール・デュカスの謎〉
〈マックス・エルンスト ソラリゼーション〉
〈パン・パン(彩色パン)〉
〈恋人たち+裸体とチェスセット マン・レイのアトリエ パリ〉

   
   

マン・レイ展のご紹介はこちらです。

   

〈パン・パン(彩色パン)〉
 1958/1966年 青に着彩されたプラスティック製のパン 71.0×27.0

 青いフランス・パン。タイトルは<パン・パン>。原語のフランス語を日本語にすると「色を塗られたパン」の意味。フランス語では食べるパン(pain)も「色を塗る」(peint)も、同じ「パン」と発音します。要するにフランス語のだじゃれです。
 マン・レイは言葉遊びを利用した制作を数多く行っています。踊るバレエと掃除のほうき(仏語でバレエ)、春とバネ(スプリング)、あるいはパレットとテーブルという二つの言葉をつなげた造語、パレッターブルなどです。
 考えてみると、同音異義語を用いた「だじゃれ」や、別の言葉をつなげて、いかにもありそうな言葉を造語するのは、シュルレアリストが多用した、思いがけないもの同士の出会いによって、おかしさや驚きを生み出す方法と共通しています。マン・レイは言葉も表現の武器としたのです。
 さらに、マン・レイの面白い点は、ただの言葉遊びにとどまらず、それを造形化してしまう点です。くだらないといえばくだらない言葉遊びを、アーティストが持つ技術やセンスを動員して、ご大層な作品に作り上げてしまう。そのことが、どこかおかしさを誘うと同時に、凄みを感じさせます。
 パンは、色を塗られることで、食物という本来の機能や意味づけ、価値が失われました。そして不思議な面白いオブジェに変身します。役に立たない青いもの/「物体」が、そこにある。ちなみに、マン・レイによると、青いパンは青い鳥の好物だそうです。

(主任学芸員 友井伸一)

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