2 金属版の実験

もう一つの制作の柱

金属の声を聞くように

一原有徳にとって金属版画は、モノタイプとともに制作の大きな柱です。既成の版画技法からは生まれてこない自由自在な発想と表現は、もう一つの一原ワールドへと私たちの想像力を誘います。
 ふつうエッチングなどの銅版画技法は、金属板に刻まれた描線に入ったインクをプレス機で紙に刷り取ります。有徳の場合は彫刻刀の代わりに、ハンマーなどの工具で叩いたり傷つけたり、糸や粒のようなものを押し付けて凹凸を加工したり、あるいは直接に腐食液をたらすなどしてできた偶然の効果を生かします。複雑な凹凸から生まれる図柄は、不思議なことに岩肌や地層などを連想させる架空の材質感たっぷりです。金属の種類によって表現が変わるさまは、まるで金属の性質を引き出しその声を聞くかのようでもあります。

金属凹版

金属の表面をたたいたり、薬品をかけて腐食させたり、様々な方法で加工された板の凹凸がドラマティックな映像を生み出します。

アルミ原版の表面

作品〈RIW59(b)〉のアルミ原版(部分)。

作品紹介〈RIW59(b)〉

どんな連想も間違いとはいえないし、もともと正解があるものでもないでしょう。なぜなら、何を描いたものでもないのですから・・・
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※画像は作品の部分です。