多様な戦後
戦前、盛んに作られた挿絵本は、戦後も引き続き制作されます。 マティスが切り紙で作った作品をステンシルで刷り、自らの文章を添えた<ジャズ>(1947年刊)。シャガールが何年もかけて練り上げた美しいリトグラフの挿絵がついた、古代ギリシャの詩人ロンゴスの物語<ダフニスとクロエ>(1961年刊)。<おかしな家族>(1948年)は、早熟の天才詩人ジャン・コクトーが、自らの挿絵と文章によって生涯にたった一つ作った童話です。
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また、日本でも、版画の挿絵が付いた本や、詩人と協力して作る豪華限定版の本が出版されるようになります。 シュルレアリスムの源泉となった謎の詩人ロートレアモンの詩に、戦後日本を代表する銅版画家駒井哲郎が挿絵を付けた<マルドロオルの唄>(1952年刊)や、詩人であり、戦前から戦後にかけて美術評論の分野でも大きな足跡を残した瀧口修造の詩にミロが挿絵をつけた<ミロの星とともに>(1978年刊)。また、デビュー間もない池田満寿夫は、<屋根裏の散歩者>(江戸川乱歩著 1959年刊)を初めとする豆本をたくさん作っています。
戦後は、本作りに積極的に参加する画家も増え、実験的なものから豪華な挿絵本まで、多様な広がりを見せていくのです。
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