オブジェと版
枠組みを飛び出す
オブジェと版
作家は早い段階から、自らの生み出す版画の絵柄と機械部品などのオブジェをパズルのように組み合わせた作品を発表しています。そこに原版自体を加えた例すらありました。彼にとって作品また創意は、ネガとポジの関係性そのものだと、とらえられているように思えてきます。
つまるところ作家は、絵を再現する技術としての版という枠組みを飛び出し、未知の映像が生み出される愉快な仕掛けとして、版画という一種の「関係性」を遊んだのではないでしょうか。そこに現れる像は、作家の期待からあぶり出された、あくまで生成途上の「可能性」であり、それを元に私たちまた作家自身も、イメージを探り当てようと目をこらす。そのような探検のフィールドとして一原有徳の制作歴に出会い直してみたいと思います。