鈴木久人写真
鈴木久人鳴門教育大学大学院教授
Hisato Suzuki

こんにちは、鈴木です。おめでとうございます。たいへん若い方たちが揃っていて嬉しく思っております。これから勝手な僕の感想を言わせて頂きます。

最初に、グランプリのmamiさん。受賞理由とちょっと違うかもしれませんけども、人間の営み、生活で出てくる薄っぺらなものと、自然界のバランスみたいなものを展示しようとしているのかな、と想ってみておりました。

それに対して伊丹 直子さんのほうはかまぼこ板を使われているわけですが、どこかmamiさんとは違って、人間の営みを肯定的に見ている。かまぼこという伝統的なものを使ってインスタレーションをするという、それぞれ相反する作品がグランプリと準グランプリになったかなと思っています。

それから佐藤 ユノさん。受賞理由にもありましたように、自分の世界観をお持ちになって、たいへん作品作りが好きなんだろうなというのがよく伝わってくると思います。

それからももさんは、11歳? すごいね! たいへんコンセプトもポリシーもはっきりしていて、11歳にしてこれだけのコンセプトを並べられるのかということに驚いて見ていましたが、逆に僕はアドバイスをするとしたら、もっと自分の好きなもの、自分がきれいだなと思えるものの世界を作っていく方向性も持っていた方がいいかなと思っています。

グループGさんは、ユニットで制作するというのはわりと最近多いことで、どこかに知っている顔もいるけど、ユニットで制作するメリット、みんなでやっていくというメリット、本来作品作りはたいへん個人的なものなんだけど、それをユニットでやることの意味をもっと盛り上げていったら、より面白い作品が作れるのではないかと思っています。

MIP賞の下川 真緒さんですが、ファイバーアートで1個1個の塊に精神性を感じる、やっぱり工芸という染色とか織りではなくてファイバーアートだと言い切っているところが、そういう情念みたいなものを感じさせたいんだという風に見てるんだろうなと思っています。

今途中でインスタレーションという言葉が出てきましたけれども、これは日本語にすると「設置する」という意味です。今では表現の一分野として確立されていますが、あるものをある空間に設置することでその空間に刺激を与えるという表現手法のことです。毎年このチャレンジとくしま芸術祭を見ているとその設置という表現手法を突き詰めって行った人たちが残ったかなというふうに思っています。決して賞に入らなかった人たちがインスタレーションとして良くないと言っているわけではなくて、ちょっとしたこと、ちょっとした気の使い方とかね、そういうことで随分違ってきちゃうんだなインスタレーションというものは。ただ置いただけに見えてしまう。そうではなくて、作家が意思を持ってそこに設置したんだという風に見せていった人たちがここ(賞)に残るかなと思っています。

ですから、あまり落ち込まないで下さい。いい作品もたいへん他にもありました。審査の段階では、今回賞にもれた方々もずいぶん挙がったぐらいですので、落ち込まないで来年もぜひ挑戦してみて下さい。

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