2009年11月20日

ピカソdeうまそ!食べある紀II

スタッフによる食べある紀を順次、紹介させていただきます。シェフの手の中にあるドラ・マール、展示室に掛かっているドラ・マール、自分なりの印象の中のドラ・マール、色んなことを考えながら食すとそれは楽しい、発見に満ちたアート体験。こんなの初めてです。すばらしいシェフたちのお仕事に感謝します。みなさんの体験はどんなでしたか?
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ドラ・マール (お菓子のお庭 藍clubさん)
 純白の優しい表情は、デリケートな甘さのグラデーションそのもの。「ドラ・マールの肖像」のおしゃれで穏和なムードを連想させて楽しい味わいでした。しかも!お店へうかがってびっくり。「キュビスム」なる第2作がひかえているではありませんか。もちろんGET。目に映る世界を幾何学的に再構築してしまったピカソたちの実験精神を、シャープな輪郭が体現します。ここは1920年代アール・デコのフランス?!と目をごしごしするわたくし。シェフの遊び心すごいです。お味もまた調和の中にアクセントを効かせたもので、うーんスィーツは深かった。自由にしかし慎重にデザインされたそれぞれのシルエットには、絵画作品に対するシェフの敬愛のエスプリがひしひし伝わってきます。二部作のエントリーどうもありがとうございました!
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おいもダンス2 (patisserie bananadance kitajima(バナナダンス キタジマ)さん)
 二つのおいしさがドッキング、それだけでわくわく。お芋のよさを二つの面から描いたという硬派な企画です。でもお味はフランクにていねいに素顔の材料を感じる、優しくさわやかな風味でした。1+1は2以上、でモデルの魅力を引き出すってこれ実にピカソのキュビスムではありませんか。お味で実感するアート理論、まいりました。
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ピカソロール (パティスリー AU POIVRE(オゥ・ポワブル)さん)
 なるほど真っ白なキャンバスを思わせるまばゆいような世界から、ごろり、ぷるん、と色んな登場人物がお口に飛び込んできます。これは面白い、確かにアーティストの遊び心そのもの。ピカソのように表現してくださった、まさに表現的鑑賞・鑑賞的表現のたまもの。そして白は「ドラ・マールの肖像」の白でもあります。それはそうと、たっぷり味わっても後をひかない上品な甘さに、何切れでもおかわりしてしまうではないですか、助けて! うーこれが1本売りの理由だったのか...。
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ドラ・ショコラ (菓子工房いぬいさん)
 あれ?とすぐ言葉がでてこない。もう一口。ありゃ? 食しているのは確かにチョコなのに...。プレーンな外観にだまされたわたくし。ひたすら味覚の手品に目をとじ言葉を止めて身をあずけたのでした...。一つのことの中に色んな答がかくれている。絵の魅力も同じこと。ドラ・マールという一人の女性の魅力だってそう。そんなシェフのメッセージが聞こえてくるようです。-- 絵のことを一言でいうのって難しい。その一言さえ選ぶことができたら。この解答、脱帽です。
neuf
芸術の都 (ケーキハウスオシグリさん)
 ブラウンのスパイラルにまとめたエレガントさの中に、あぁ...、おぉ...、思わず歓声をもらしてしまう、甘酸っぱさと香ばしさが次々と協奏してきます。謎めいた魅力がいくつでも隠されていそうな、アーティスト・ドラの大人の愛らしさを思ったことです。ネーミングに十分匹敵するロマンティックな一時を過ごしました。うー深い。
huit
フリアン・ド・ドラマール (菓志道TAKAICHI(たかいち)さん)
 ほがらか。小さなボディからぱっと光が口中に広がるような、パンチのあるおいしさです。一目見て強い印象を与えるドラの、輪郭のはっきりした個性を思わず連想してしまいました。感性と感性が出会うアートにとって、第一印象はとても大切。明快な一口目の向こうに二重三重の風味が織り込まれて来る小さくても力強いドラマ。焼菓子って深いんだなあと感服した次第でした。
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トレゾール・マカロン (ナッツベリーファームさん)
 玉手箱式という手がありました。サクとくだけてやって来るお味は、新鮮な食べごたえを満足させます。恋人ドラを、同じ人と思えないほどたくさんの絵に変貌させたピカソを思ったことです。一色ごとシンプルに見えてもそれぞれハッとさせるお味のコンビネーションが仕込まれていて楽しめました。今度はどんなドラが思い浮かぶかしら、一つ一つの出会いが待っています。それぞれが宝箱なんですね。